静岡県内で消滅「銭湯のペンキ絵」復活へ 湖西・みどり湯 浜松出身の銭湯活動家が企画、20日公開制作
公衆浴場の継業とコンサルティングを行うゆとなみ社(京都市)は20日、湖西市新居町の銭湯「みどり湯」で、静岡県内で消滅した浴室の壁の風景画「ペンキ絵」を復活させる。1879(明治12)年創業のみどり湯は店主の高齢化などにより、将来的な事業継続が課題になっている。同社はペンキ絵や洗面台の鏡に掲示する広告を企業から募り、事業継続支援に取り組む。 企画したのは、同社代表で銭湯活動家の湊三次郎さん(34)=京都市、浜松市浜名区細江町出身=。京都の大学在学中に銭湯に没頭し、2015年に後継者不在だった京都市の「サウナの梅湯」を引き継いで再建。現在は関西を中心に銭湯10軒を経営している。 静岡県によると11月現在、営業許可を得ている銭湯は9軒(うち1軒は休業)。県西部では浜松市の「巴(ともえ)湯」が22年に閉業し、残るは同市の「みよし湯」とみどり湯だけだ。みどり湯は床のタイルや浴槽が漏水しているが、「いつまで営業できるか分からないし、費用もかかる。修理は諦めた」と4代目店主の青山勝さん(82)。壁の塗り替えの相談を受けた湊さんが「県内の銭湯を残すためにできることがしたい」と企画した。 10月下旬、湊さんら運営メンバーが下見に訪れた。ペンキ絵は2~3年おきに塗り替えが必要で、現在県内にペンキ絵が残る銭湯はない。当日は滋賀県のペンキ絵師山本奈々子さん(32)が1日かけて富士山と浜名湖を描くという。 ペンキ絵や鏡に企業名やイラストを描く広告も地元企業から募り、この広告費を制作費や修繕費に充てる。山本さんは「ペンキ絵は元々、お金を集める代わりにサービスとして絵を描く広告媒体だった。この仕組みを踏襲して、経営支援につなげたい」とする。 企画の最終的な目標は、同銭湯の将来を見据え、事業継続に取り組む地元の仲間を集めること。湊さんは「若い世代にもみどり湯の良さを伝え、清掃や運営などを支えるメンバーを集めるための種まきになれば」と力を込めた。 制作の様子は20日午前10時~午後6時に一般公開する。同社は公共交通機関での来場を呼びかけている。
静岡新聞社