「カブール陥落」から3年...英国最後の駐アフガン大使はその時、何を考えたか
<21年8月、崩れ落ちるようにアフガニスタンから撤退した米国と同盟国の軍隊。当時の駐アフガン英大使がその時を語る>【木村正人(国際ジャーナリスト)】
[ロンドン発]米欧諸国が崩れ落ちるようにアフガニスタンから撤退してから3年になる。イスラム原理主義武装勢力タリバンが支配権を掌握する中、英国政府は11日間で1万5000人以上のアフガニスタン人と英国人をカブール国際空港から空路、脱出させた。 【動画】閲覧注意:命懸けで離陸する米軍機に取り付き、落下したアフガンの男たち 首都カブールは2021年8月15日、陥落した。英国最後の駐アフガニスタン大使ローリー・ブリストウ氏(現ケンブリッジ大学ヒューズ・ホール校長)は近著『カブール:ファイナル・コール アフガニスタン撤退の内幕 2021年8月』で私たちが学ぶべき教訓について記している。 事態が急変する前、ブリストウ氏はアフガンのアシュラフ・ガニ大統領(国外脱出)といかに共和国を存続させるかについて協議していた。 物事がうまくいかない時にどう対処するか。成功と失敗は何を意味するのか。「この2つの間にある境界線は非常に微妙だ」とブリストウ氏はいう。 「政策と戦略の大失敗、それ以上のものだった。アフガンの人々、アフガンに安定と安全をもたらそうと20年にわたる作戦に携わってきたすべての人々にとっての人間的悲劇だった。何が起きたのか、なぜ起こったのかを理解する必要がある」(ケンブリッジ大学のホームページより) ■「最も困難で危険な状況だった」 「私たちの誰もが直面したことのない最も困難で危険な状況だった」とブリストウ氏は振り返る。 空港のコントロールを維持し、避難を管理するために必要な部隊と支援は到着しつつあった。数千、数万の絶望的な人々がフェンスを乗り越え、滑走路を横切り、ターミナルを占拠し、離陸しようとする飛行機にしがみついていた。空中で振り落とされて命を落とした人もいる。 阿鼻叫喚のカオスが繰り広げられた。米欧諸国のために働き、タリバンが支配するアフガンに留まれば命が危険にさらされるアフガンの人々を避難させなければならない。避難が終わる直前、空港のゲートで爆弾テロが起きた。米兵13人と約170人のアフガン市民が死亡した。 アフガンの国家と軍隊は米国と同盟国の軍のプレゼンスに依存していた。米軍が撤退する条件が整えられていなかったため、米国と同盟国の軍が撤退すると体制はたちまちのうちに崩壊した。8月14~30日の短期間に米欧諸国はカブール国際空港から計12万3000人以上を脱出させた。