米国株は「終わりの始まり」が近い!?投信残高「過去最高」でも専門家が懸念するワケ
三菱UFJアセットマネジメントのインデックスファンド、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の純資産が、過去最高を記録したと報じられた。個人投資家を中心に今もなお、注目度が高い米国株。しかし筆者は、そんな米国株に「終わりの始まり」が近づいているのではないかと考えている。その理由とは。(アレース・ファミリーオフィス代表取締役 江幡吉昭) ● 米国株の「終わりの始まり」が近づいている!? 心得ておきたい投資の格言 米国株は長らく右肩上がりの成長を続け、多くの個人投資家や世界中の機関投資家・ファンドなどから魅力的な投資先として重宝されてきました。しかし、最近の動向を見ると「終わりの始まり」が近づいているのではないかと考えざるを得ません。 10月28日、日本経済新聞は、「スリムS&P500がグロソブ抜く 投信の残高、歴代最大」というタイトルでニュースを配信しました。三菱UFJアセットマネジメントのインデックスファンド、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の純資産が、過去最高額に到達したという内容でした。 このニュースを見て、私はある言葉を思い出しました。 「人の行く裏に道あり花の山」――投資の格言です。裏を返せば、世の中の大多数の人が進む道を選んでいては勝てない、ということです。 歴史を振り返ると、人気を博した投資テーマは、頂点に達した後、数年内に下落し、10年程度は復活できませんでした。ということは、米国株の代表的指数S&P500も、そろそろピークを迎えたといえるかもしれません。 少なくとも、私はこれから新規で米国株には投資できないと考えます。あとは、利食い時を見極める、もしくは大幅な下落を待ってでないと、この資産への投資は危険ではないかと。 「投資の素人が集まると、そのテーマは終わる」――これが投資の鉄則なのです。
● 過去の歴史に学ぶ 流行した投信のその後は…? 先述の通り、歴史を見てみると、投資信託の残高が過去最高となったものは、軒並みその後、下落しています。 過去の事例その1:ノムラ日本株戦略ファンド 2000年はじめ、初の1兆円ファンドとして話題になったのが、「ノムラ日本株戦略ファンド」です。1990年代のバブル崩壊から10年たち、日本株相場は底入れしたと考えていた時代。「今度こそ日本株」と考えた野村証券が募集開始した巨艦ファンドでした。 しかし、直後にITバブルの崩壊期が重なり、2000年の設定来から3年後には基準価格は6割下げ、4000円台に下落。その後、設定時の価格である1万円を回復することなく、再度リーマンショックで6割減となり、結局、基準価格1万円を取り戻すのに20年の歳月を要することになったのです。 過去の事例その2:グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型) 次に、2000年代に流行したグローバル・ソブリン・オープン(グロソブ)を挙げましょう。グロソブは、毎月分配金型投信の先がけとなった商品で、個人投資家にとても人気の高い投資信託でした。 毎月分配金型とは、投信を保有するだけで毎月利息のような形で分配金が支払われるもの。ただし、本当に資産が増えているわけではなく、投資元本を切り崩して配当を払うことも多々あり、“タコ足配当”として問題にもなりました。 2002年には、先述のノムラ日本株戦略ファンドを純資産で追い抜き、1兆円ファンドとして話題になりました。最終的に、リーマンショックの直前には、5.7兆円の純資産を積み上げることになりました。 しかし、リーマンショックやその後の円高、他の毎月分配金型投信の追い上げもあり、純資産は減少。基準価格自体も、設定来の1万円を超えていない状況です。今の純資産総額は2600億円となり、完全にブームは過ぎ去ったと考えていいでしょう。