『虎に翼』松山ケンイチ インタビュー「法曹界で戦う人はこうであってほしいという理想を込めています」
◆伊藤沙莉さんの印象はいかがですか? 主演として毎日撮影に挑んでいると思うのですが、電池切れみたいなものが全くないんです。それが本当にすごいなと思います。僕も大河ドラマで経験しているのですが、電池切れになると役の方向性が迷子になったりするんです。しかもそれを修正しようと考えることすらできなくなる。でも沙莉ちゃんは役を演じていて迷いがないなと僕は感じています。朝ドラでは役の年齢や立ち位置、階級、環境が変わっていく中で、それぞれ演じ分けていかないといけないと思うのですが、そこを迷いなくやられていて。すごいな、体力あるなと思います。 ◆松山さんはXでもオフショットなど写真を投稿されていて注目されていますが、視聴者からの反響で意外だったものはありますか? 僕は小道具を使うのがすごく好きで、小道具の中でいろいろな表現ができると思っているんです。なので現場でいろいろ試しているのですが、これ誰も気づかないだろうな、と思ってやったことが気づかれていたりして、見てくれている方がいるんだなと。それはすごいなと思うと同時に怖いなとも思いました。画面に映る全てが表現につながってしまうので、指先まで何を表現するべきなのか、表現したくないものは止めないといけないわけで。それをすごく考えさせられましたね。身体全体で役を表現することの怖さや大切さをSNSの皆さんの発信の中から感じました。 ◆最後に、最終週の見どころをお願いします。 長い間やらせていただいているので、桂場は僕の中でもすごく大切なキャラクターだと思っています。僕は、役に対して自分の理想を込めてしまうところがあって。僕自身は法曹界の人間でもないしただの田舎のおじさんなのですが、法に対して、人権に対して、権力に対して戦う人はこうであってほしいなというところを込めているんです。それが桂場のキャラクターにもかなり作用されている気がします。 人はどうしても地球全体、日本全国民を見られるわけではないですし、人によっていろいろな苦しみや喜びがあって、地域によって文化も違う中で、日本全国の一律の法律を作るってものすごく難しいことだと思うんです。それを一人の人間が最高裁長官になってジャッジをしていくというのはとても難しいことで。その中で正しいことや間違ったこと、いろいろなことがあって、それも時代によって変わってくると思うのですが、人間みんな間違うのが当たり前ではあるものの、その間違いから何が間違っていたのかと議論が始まっていく。そういったことを、たくさんの登場人物を通して皆さんに伝えている、それも一つのテーマなのではないかなと思いました。 認める、認知することも大切なことだと思いますし、認めてからどう付き合っていくのか、対峙していくのかということが、人権を大切にするということだと思います。僕自身、このドラマからそれを学びました。 重い話の中で、現場では皆さん繊細に演じている部分もあればコミカルに演じている部分もあって。人に対しての優しさを感じられるドラマになっていると思いますので、最後まで見届けていただければと思います。
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