最高峰の靴職人が集結する「FERRAGAMO」の工房をレポート:生涯を靴づくりに捧げた創業者のDNAが息づく場所
マドンナ(Madonna)やアンジェリーナ・ジョリー(Angelina Jolie)など、今なお著名なセレブリティを顧客に抱えており、この貯蔵庫は「フェラガモ」の歴史とともに今後も拡張されていく。
地上階を占めるのが、顧客のための一点物のオーダーメイドとコレクションのプロトタイプを制作する、靴職人が集結する工房。靴制作は、靴の元になる土台の木型を作るところから始まる。
昨今は3Dプリンターを用いてプラスチック製を使用するブランドも多いが、「FERRAGAMO」は創業当時から変わらず木製を採用している。 機械よりも職人の手による精密さが勝るのは、長い歴史の中で培ってきた技術あってこそ。機械でおおまかにカットされた原型が、職人の手によって研磨され、顧客一人ひとりの足の形を再現した木型が生まれる。 その後は、型紙通りにカットした革を、強い力で木型に添わせながら接着剤で留めていく。
カッティングこそ最新テクノロジーを備えた機械に頼るものの、たとえば格子状に広がったデザインのサンダルのアッパー部分や、ソールに縫い付けるブランドタグ、ストラップの留め具の設置、繊細なビーズの装飾など、大部分を占めるものが精妙な手仕事なくして実現しない。テクノロジーによって生産性を高めつつも、それらはあくまで職人の手業をサポートする脇役的存在なのだ。 次は、シワにならないように革を叩きながら木型になじませたり、ヒールを釘打ちしたりと、各部品を木型を元に繋ぎ合わせていく作業。強い力を要するこのステップでは、男性の職人が中心となる。最後はデザインによって、スパンコールを一粒ずつ飾るなど緻密な作業を重ねて、ソールを貼り合わせて完成する。
伝統を継承して日々その技術に磨きをかける職人の姿からは、靴づくりと人体解剖学の研究を通して美しく履きやすい靴を追求した創業者のDNAが、今なおメゾンに息づいていることを物語っていた。
創業者一族と職人の手によって、時代の変化を捉えながら進化する「FERRAGAMO」。熟練の手業と歴史に裏打ちされた独自のものづくりで、これからも唯一無二の存在感を放つことだろう。