「どうして…」亡き母が遺したのは大量の新品タオル…そこに秘められた切なすぎる母娘の「感動エピソード」
遺品は故人の生き方を反映する。大量のものに囲まれて一人で亡くなられた現場を見ると、「親子関係は良好だったのだろうか」などと、つい生前の暮らしぶりに思いをはせてしまう。誰もものを持っては逝けない。形はさまざまだが、結局のところ、最後は誰もが「身ひとつで逝く」。 【漫画】死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 孤独死、自殺、ゴミ屋敷、夜逃げの後始末……“社会の現実がひそむ”遺品整理と特殊清掃の現場を克明に記録した『遺品は語る』(赤澤健一著)から、日本の現状をお届けしよう。 『遺品は語る』連載第12回 『「正座すがた」で亡くなった高齢女性…片づけの依頼が遺品整理と化した「予想外の事態」と残された「一冊のノートの謎」』より続く
遺品が伝える「わが子への思い」
孤独死の案件では、故人に身寄りのないケースも多いが、家族がいる場合は、それはそれで切ない場面に遭遇することになる。 しばらく前のことだが、田舎の実家に一人暮らしをしていて、88歳で亡くなられた方の遺品整理を60代の娘さんから依頼されたことがある。高齢のお母さんが心筋梗塞で急に倒れ、救急搬送されたものの病院で亡くなられたという。住み慣れた田舎で暮らしたいという母親に対し、仕事があって都会に住まねばならず、離れて暮らしていた娘さんが、お母さんの住んでいた実家の片づけを頼んできたわけだ。 母親の様子を見に、しばしば実家に顔を出していたらしく、「最後に会ったのは3日前で、あんなに元気だったのに……」と、娘さんは気落ちしていた。一人暮らしは母親本人の希望だったとはいえ、結果として寂しい思いをさせていたのではないかと、娘さんなりに思うところがあったのだろう。
ものを大事に使っていた母
娘さんによれば、元気なころ、お母さんはものを大切にし、なんでも古くなるまで使い切る方であったらしい。こうした故人の生活ぶりを話していただくことは、遺品整理をするスタッフには非常に学びになるものだ。 ところが遺品整理をしているうち、箱に収められたままの真新しいタオルが大量に出てきた。それは、娘さんがお母さんのために毎年プレゼントし続けてきたものだった。 新しいまま手をつけずに、几帳面に年ごとに整理して並べられていた。大切に取っておいたお母さんの気持ちが偲ばれる。 それを見た娘さんは、「使い古したものばかり使わずに、新しいのを使ってくれてたらよかったのに……」と涙声だった。 作業スタッフも、思わずもらい泣きしそうだった。 『「遺品の片づけは心の片づけ」…不仲のすえ孤独死した父の遺品整理で、「思い出した」父との絆 』へ続く
赤澤 健一(グッドホールディングス株式会社代表取締役社長)