北朝鮮ミサイルにどう備える? 核シェルター建設の問い合わせが増加中
北朝鮮による核ミサイルの脅威が現実味を帯びる中、「建物の中、又は地下に避難してください」とJアラートで呼びかけられても、どこに避難したらいいの? と戸惑う声が聞かれる。そんな声を反映してか、核シェルターを扱う業者への問い合わせが増えている。
静岡市清水区の閑静な住宅街。瀟洒な民家の玄関を入ると地下にのびる小さな階段がついていた。急な階段をおりていくと厚さ20センチという、鉄枠とコンクリでできた頑強なドアがあった。 重々しいドアを開けると、中はコンクリ壁の地下倉庫風の小部屋。棚に缶詰などの食料や水がたくさん置かれている。カーテンの仕切りがあり、カーテンを開けると簡易トイレも置かれていた。小部屋の先にさらに厚さ10センチのドアがあり、分厚いドアを開けるとコンクリ壁で囲まれたリビングを思わせる部屋が広がっていた。 「最大6人がここで、放射能が無害化されるまでの2週間を生活する想定です。広島の原爆クラスの核爆弾が660メートル離れた地点に落ちても大丈夫なつくりになっています」とサクラビルテス株式会社代表の櫻井和男氏。地下室は同社が手がける核シェルター事業のモデルルームだ。
強固なコンクリ壁の部屋の中にはスイス、Andair社の空気清浄機が設置されており、特殊フィルターにより放射能塵などの有害物質を99.995%とろ過し、外気を安全な空気にかえて室内に供給するという。また、気圧弁が設置されていてシェルター内の気圧を大気圧よりも0.5~1.5hpa高く保つことで外部の汚染された空気の侵入を防いでいる。非常口用の脱出口が別に設置されており、ドアが使用できなくなった際も閉じ込められることなく地上に出られるという。
NPO法人日本核シェルター協会(神戸市、織部信子代表)によると、空気洗浄機メーカーはイスラエルやドイツなどにもあるが、国内の核シェルターで使用されている空気洗浄機は多くがAndair社製品だという。 サクラビルテス株式会社は住宅などの建築会社だが、櫻井氏の父親が防災の観点から核シェルターに関心を持ち2005(平成17)年より防災シェルター建設に取り組むようになった。 世界の核シェルターの普及状況や日本での規格などを調査する一方、2007(平成19)年にはモデルルームを開設した。これまで2009(平成21)年の北朝鮮ミサイル発射実験、2011(平成23)年の東日本大震災の後に問い合わせがあったものの、通常は関心が低く問い合わせもほとんどない状態だという。しかし、今年3月、北朝鮮が弾道ミサイルを発射し日本海に落下する事件以降、問い合わせが増え、モデルルームの見学も増えている。