「レフェリー? 英語で話しました」ヘント渡辺剛は指揮官に“キャプテン代役”を託される充実ぶり!すっかり強豪クラブの“顔”のひとりに【現地発】
日本代表復帰に意欲。「全員が与えられた場所で100%やって誰が選ばれるか」
ベルギーに来てからの渡辺は本当にタフだ。 コルトレイクの2年目から彼はどの監督にとっても欠かせぬ存在になり、昨季ヘントにステップアップすると名将ハイン・ファンハーゼブルクからも寵愛を受けた。日本代表の一員としてアジアカップに参加した時期などを例外として、渡辺はコルトレイクとヘントで2年間、国内外のコンペティションをフルに出続けた。 ワウター・フランケン監督が就任した今季もそう。UEFAカンファレンスリーグの予選を戦いながら、今季のヘントは木・日・木・日...とタフな連戦を8試合こなしているが、チームの中で唯一人750分(+アディショナルタイム)フル出場しているのが渡辺なのだ。しかも今回のウェステルロー戦は、3日前にシルケボー(デンマーク)と延長戦(3-2でヘントの勝利)を戦ったばかりとあって、まだ8月半ばだというのに疲労がピークを迎えていた。 「前回120分全部出たから、俺も『今日は絶対にスタメンじゃない』と思っていたんですよ。120分やってから中2日で試合なんで、ありえない日程なんです。(シルケボー戦でフル出場したフィールドプレーヤーのうち)俺と16番の中盤の選手(デロージ。ウェステルロー戦は88分間プレー)だけが連戦で先発したんですけれど、今日は身体がヤバかったです。前回の試合では俺も両足がツってしまって『さすがに次の試合はベンチかな』と思っていた。昨季も中2日のペースでずっと試合があったんですが、今回は初めて120分の試合になりました。さすがに身体がキツイから、さすがに交代すると思っていたら、試合に出続けましたね」 この日は出番のなかった本来の主将、ミトロビッチが「キャプテン!」と渡辺に声を掛けてから家路に急ぐ。 「コルトレイクではキャプテンをやりました。このチームでも試合の途中からキャプテンをやりました。選手交代でキャプテンをしたことはありますが、スタートからキャプテンを務めるのは初めてでした。ルールが変わったので、俺がレフェリーに言いにいかないといけなかった」 ウェステルロー戦の渡辺は少なくとも2回、チームを代表してレフェリーに異議を唱えていた。 フランケン監督は渡辺についてこう評価する。 「ワタは良いパーソナリティを備えており、常に頭を回転させる賢い選手で、チームを引っ張ることができる。彼は話すタイプのリーダーではなく、手本を示すタイプのリーダーだ。ピッチの上で証明すること、それがもっとも重要なんです。監督を務める私にとっても特別な存在です」 渡辺に今季の目標を尋ねると「今年は昨季(7位)より良い結果を残したい。チャンピオンを狙いたい。カンファレンスリーグでも良いところまで行きたいですね」という答えが返ってきた。“チャンピオン”とはベルギーリーグ優勝とチャンピオンズリーグ出場を掛けているのだろう。 日本代表復帰への意慾をあらためて訊くと「もう結果を出すしかない。試合に出て勝ち続けること――それが俺がやれること。それしかないです」とヘントの勝利に貢献することが代表への道であることを示した。 先日、谷口彰悟がSTVVの入団記者会見で欧州でのステップアップと26年ワールドカップ出場に向けて「メラメラしています」と意欲的に語っていた。そのことを渡辺に伝えると「さすがです」と言ってから続けた。 「それが日本代表の強いところだと思うんですよ。全員が与えられた場所で100%やって誰が選ばれるかというのが日本代表の仕事だし、誰が選ばれるか分からないのが日本代表です」 疲労困憊のはずの渡辺は丁寧に取材に応えてから、クラブ関係者に促されながらVIPの待つ部屋へ向かっていった。脂の乗り切った27歳は、すっかりヘントの顔のひとりになった。 取材・文●中田 徹
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