昭和初期の文化財に泊まれる! レトロな温泉旅館が「有名アニメ作品のモデル」って本当? 独特なおもむきの“擬洋風建築”とは
●あのアニメ作品のモデルなのか?
それでは、「斉月楼」も含め、金具屋の客室はどのようなものでしょうか。 客室は合計で28室あり、どれも歴史が古く、明治から昭和にかけて、流行を反映しながら職人がすべて異なる造りで仕上げたといいます。 上級ランク「特室」のなかには、明治41年の客室や宮大工がつくったもの、大人数で泊まれる部屋があります。襖や障子の細工、床の間、廊下など内装に細かな細工があり、和洋をとりまぜた趣が独特です。 さらに、天然温泉風呂がつくような「ゆったり和室」ランクの客室や、シンプルな「一般和室」の客室もあります。
金具屋にベッドの部屋はなく、すべて和室です。また、渋温泉の商店街を保存するためにも、売店や自動販売機、バー、レストラン、ランドリー、有料テレビ、DVD貸し出し、マッサージのサービスは提供されません。 一方で、金具屋は源泉掛け流しの温泉も特長です。専用の源泉を4つ所有し、さらに渋温泉の共同源泉からひいた湯も加えることで、3つの源泉が用意されています。 その見た目も、触れる感じも違う温泉を、3つの大浴場と5つの貸切風呂の合計8か所でたのしめます。なお、貸切風呂は無料で利用できます。 こうした金具屋の外観や内装は独特です。そして、「斉月楼」の屋根のつくりやライトアップされている様子、渋い朱色の館内、柱のない大広間といった部分が、有名アニメ作品『千と千尋の神隠し』の舞台なのではとも言われています。 実際に、モデルにしたいといった打診はあったのでしょうか。作品との関係について、前出の担当者は次のように語ります。 「映画の舞台やモデルになったということではありません。ただ作品を製作するにあたり、現代の日本で失われたモノの世界を構築していく際に『擬洋風建築』の資料が必要となり、金具屋の写真等が使用されたということを伝え聞いています」 作品に登場する建物が昭和初期の疑洋風建築などをもとに描かれているとするならば、「斉月楼」も同じ時代に建てられた建物なので、似ている部分が多いということのようです。 また、金具屋ではそうした建築の歴史に触れられるツアーを開催しています。 ツアーの参加者からは、「当時の宮大工の技術がすばらしいことがわかった」と感心する声や、「建築の発想が面白く、どこを撮っても絵になる」といった感想が寄せられているといいます。 また、なかには昭和初期の家を思い出し、「ぜひ残していってもらいたい」という人もいるようです。 ※ ※ ※ 金具屋は、昭和初期の温泉宿の風情を楽しめる旅館です。 客室料金はタイプや食事により異なりますが、昔の凝った木造建築に泊まれるプランは、1室2名で2万6400円(税込)からです。
Peacock Blue K.K.