インド政治のもろさ示した「世界最大」の選挙結果 議席数が大きく減少、与党が後退した3つの敗因
この選挙でも、州南部ではインド人民党と地域政党の候補者が共倒れとなるケースが多かった。 これに対して、貧困層の保護やイスラム教徒に融和的な政策をとった国民会議派は、元州首相が農業や水問題、雇用などの生活に身近な問題を解決すると訴え、地元の人々の支持を広げた。国民会議派中央のマリカルジュン・カルゲ総裁もカルナータカ州出身のダリット(最下層の被差別民)で、現地入りし積極的にテコ入れをした。 インド人民党敗北の2つ目の要因として指摘できるのが、イスラム教徒の扱いである。
カルナータカ州政権は、2022年に州立学校などでの女子学生のヒジャブ(スカーフ)禁止措置を容認した。2023年4月にはイスラム教徒に割り当てた公務員・公立学校入学などでの留保枠を廃止するなど、イスラム教徒に対して厳しい政策が続いた。 ヒンドゥー・ナショナリズムを推進するインド人民党の中央の意向を汲んだものだといえるだろう。イスラム教徒側の反発もあったものと見られる。 中央政治でもインド人民党は、イスラム教徒を差別する改正国籍法を施行、イスラム教徒が多く住むカシミール地方の特権を廃止し、連邦直轄地に併合するなど、イスラム教徒の反発を生む政策を相次いで打ち出していた。
一方で、ヒンドゥー教徒のほうの票を固められたのかというと、このときやはりインド独特の地方政治の派閥争いが亀裂を広げることになった。インド人民党はモディ首相が現地入りして候補者を応援したが、地元に密着した政策で有権者の心をつかむことができなかった。 ヒンドゥー教徒のなかには、シヴァ神をあつく信仰する「リンガヤット」と呼ばれるコミュニティがある。カルナータカ州ではリンガヤットが人口の20%弱を占めるといわれる。
筆者はその「総大将」に直接会ったことがある。リンガヤットの指導者で州首相を務めていたB・S・イエデュラッパだ。 ■農民の不満が高まる政策 世界経済フォーラムのインド大会でインタビューを申し込み、直接会う機会があった。非常に気難しい人だった。 お付きの人が機嫌を伺いながら、インタビューは英語では行えない、事前に質問項目を提出せよとさまざまな注文をつけてきた。実際に会ってみると愛想笑いの1つもない。見知らぬ日本のジャーナリストを警戒したのか、とにかく扱いが難しい人だった。