信越化学やパンパシHDには独自の強みがあり、日本株全体が上昇していなくても買っていい! トランプはバイデンよりインフレにアクセルを踏む経済政策を取る
●日本株全体が上昇していなくても、信越化学やパンパシHDを買っていいワケは? トランプとバイデンの経済政策の違いも解説 元フィデリティ投信トップアナリストで、米国・シアトルからメルマガ&オンラインサロン「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう! 」で情報配信をしているポール・サイさんが、東京MX2で毎週月曜~金曜22時から放送されている、「WORLD MARKETZ」に電話でゲスト出演した。 【詳細画像または表】 前回の放送では、日経平均が史上最高値を更新したにもかかわらず、「日本株はそこまで期待できない」とポールさんが語る理由を、日米株の強いセクターを比較することで紐解いた。 今回の放送では、ポールさんがカリブ諸島のセントルシアに泊めてあるヨットの上から登場。日経平均の4万円到達について、ポールさんがどう見ているのかを語ってもらったほか、トランプ前大統領(以下、氏省略)とバイデン現大統領の経済政策の違いや、米10年債利回りの重要性を解説してくれたので、さっそくチェックしていこう。 ●カリブ諸島のセントルシアでヨットに乗りながら、スターリンクを使って経済番組にZoom出演! 番組冒頭、ポールさんと連絡がつながると、なにやら、きれいな空をバックにヨットの上からポールさんが登場した。 これを見たアシスタントの木村カレンさんが「背景の空がまるでCGの合成みたい」と顔を輝かせながら、ポールさんがカリブ諸島のセントルシアから生出演してくれたことを紹介。 続いて、ポールさんはカメラの位置を変えて、セントルシアにはピトンという世界遺産の800メートルの山があったり、リゾートもあることを教えてくれた。 ポールさん滞在時のセントルシアは雨季を過ぎて乾季になり、気温は26度程度と少し暑いぐらいで、日暮れはおよそ18時、日の出は7時前くらいなのだそう。 すると、番組MCの渡部一実さんが、ポールさんが前回ヨットから出演した際、イーロン・マスク率いるSpaceXの衛星通信スターリンクでインターネットをつないでいたことを思い出し、今回もスターリンクを使ってZoom出演していることをポールさんに確認。インターネット回線に遅延がなく、音質も素晴らしいことを絶賛していた。 ●日本株の今の上昇は、円安とデフレからインフレへの期待が主なドライバーで、ずっと長く続くものではない 次は、日経平均の話題に。 日経平均が史上最高値の4万円に到達したけれど、日本株の強いトレンドが続くかどうか、短期と中長期に分けてポールさんに話を聞きたいと渡部さんが切り出した。 日経平均はある程度勢いがあり、短期では上昇する可能性はあるとポールさん。 ただ、最近のチャートを見ると、少し円高になったことで下落していて、このことからわかるのは、日本株の今の上昇は、円安とデフレからインフレへの期待が主なドライバーになっていることだという。 そういったドライバーはずっと長く続くものではないとポールさんは見ていて、日本株が上昇トレンドに入った可能性も低いということだった。 また、今回上昇しているセクターを見てみると、円安で自動車が回復して、資源も円安やバフェットが買ったことで上昇。デフレからインフレへの期待で、銀行や金融も上昇しているけれど、中でも自動車に注目すると、日本経済全体が自動車業界に依存している部分が大きいとポールさん。 一方で、世界を見てみると、電気自動車ではすでにテスラが出てきており、BYDなど中国でかなり強い競争相手も最近は現れたそう。 今すぐの問題ではないものの、あと10年くらい経って自動車業界の競争が激しくなったときに、日本もちゃんと競争できるように強くならなければならないのと、自動車依存の産業構造を進化させることが急務だとのことだった。 ●信越化学はシリコンウエハーや素材、パンパシHDは日本文化の魅力発信に強み。日本株全体が上昇していなくてもピックアップしていい 日本株全体は上昇トレンドに入っていないとするポールさんだが、日本の個別株で強みや技術を持つグローバル企業はピックアップしてもいいようだ。 そんな銘柄の例としてポールさんが2つ挙げたのが、信越化学工業(4063)とパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(7532)だ。 信越化学工業はシリコンウエハーやいろいろな素材、石油関連に強みを持っている会社。チャートを見てもずっと上昇トレンドで、そうなるにはそれなりの理由があるのだという。 もう1つは、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスだ。もともとドンキホーテという名前だったけれど、アジア太平洋圏全体をマーケットとして狙いたいということで、パン・パシフィックに社名を変更した経緯があるそう。 特に、アジアは日本の品質に憧れるようになっており、ポールさんが在住するシアトルでもラーメンが流行。寿司やアニメといった日本文化が世界を魅了しており、日本のものを海外に持っていくことで儲けようとしているとポールさん。 パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスは小売りの会社で、テクノロジー企業や輸出企業ではないものの、グローバルに展開したことでグローバル企業に脱皮しており、日本経済が悪くても会社の成長と関係がなくなっていくという理由で上昇しているようだ。 なお、ポールさんが個別株を重要視しているのは、株価指数(ETF)を買うと、もともと買うつもりがないものも含まれてしまうからだ。 株価指数なのにS&P500が強いのは、たまたまテクノロジーやITが入っていて、景気もいいからだけであって、日本のTOPIXや日経平均が一番いい株価指数か、それだけを買えるのかという意味で考えると、そこまでよくはなく、個別で見たほういいとのことだった。 ●トランプのほうがバイデンよりインフレにアクセルを踏む政策をとる 続いては、アメリカで11月に行われる大統領選の話題に。 大統領選の指名候補者選びで、共和党はトランプ、民主党はバイデンにほぼ決まりそうだけれど、この2人の経済政策で決定的な違いはあるのか、渡部さんがポールさんに聞いた。 ポールさんから見ると、トランプもバイデンもある程度インフレに向くような経済政策を取るのだけれど、トランプのほうがバイデンよりインフレにアクセルを踏む政策を取るようだ。 トランプはお金のばらまきや財政出動が好きで、関税引き上げや移民減少もインフレにつながるため、すぐにではないけれど数年経ってインフレが高くなる可能性を考える必要があるそう。 一方、バイデンはどうかというと、財政出動は同じようにする一方、増税やインフレにブレーキをかける政策も同時にやるため、インフレは穏やかになるようだ。 ただ、いずれにしてもインフレにつながりそうな政策を取るところは共通だとポールさんはコメントした。 ●米10年債利回りは一番重要な金利で、常に注目すべき 最後は、米10年債利回りの話題に。 番組放送日(3月12日)に発表された米CPI(消費者物価指数)が予想を上回ったことに反応して、米10年債利回りが上昇したことを渡部さんが取り上げ、個人投資家が米10年債利回りをどう見ていけばいいのか、ポールさんに質問した。 米10年債利回りは、アメリカでリスクフリー(国債からのリターンはリスクがないとみなせるため、リスクフリーと呼ばれる)金利と言われ、一番重要な金利だから、常に注目すべきだとポールさん。 米10年債利回りのもう1つ名前はベンチマーク金利だそう。米10年債利回りは株や原油、全ての金融資産の値段設定の基準になるから、ベンチマークと呼ばれるそうで、その点からも注目しなければならないようだ。 米10年債利回りは名目10年債利回りで、インフレも含まれているため、米CPIが少し高めだったことに反応して、米10年債利回りが上昇するのは合理的とのこと。 そして、米10年債利回りを見る際にはポイントがあるそうで、米10年債利回りが下がると、相対的に他のリスク資産の魅力が上がり、値段も上がるようだ。 例えば、米10年債利回りが下がった分、株式の現在価値の計算で、将来の利益が高くなり、成長株は上がるため、金利が下がればテクノロジー株は上がり、金利が上がればテクノロジー株は下がるということが起きるのだという。 また、米10年債利回りで5%を取れるなら、ベンチャー企業や途上国などに投資する必要がなくなってしまい、そのあたりが厳しくなってくるそうだ。 ここで、ポールさんが「言いたいことが3つある」と切り出した。 1つ目は、コロナ禍で世界の金利が低い時はみんな気持ちよくいられるけれど、コロナ後に世界で揃って金利が上がり、いろいろなところが淘汰される現象が起こるということ。 2つ目は、日本の金利は少し上昇しているけど、他の国と比べるとそこまで上昇していないことがリスクだということ。もし日本で金利が上昇すると、いろんな会社や銀行が大変になってくるようだ。 3つ目は、金利はいろんな資産価格の中心にいることから、太陽のように考えていいとのこと。また、人間でいうところの体温計のようにも考えられて、金利が低い時は景気が少し悪く、金利が高いところで、景気がまだ大丈夫であれば、ある程度元気なのだそう。 今のアメリカの金利は4%、実質金利は2%ぐらいで、それでもアメリカ経済が成長できるということは、わりと元気に見えるということのようだ。 個人投資家が毎日金利を見て、そのついでに為替や主要株価指数を見ると、肌感覚が出てくるのでオススメしたいとのことだった。 ここまで、3月12日(火)放送の「WORLD MARKETZ」に電話出演した、ポールさんのマーケット解説を中心にお届けした。 「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう! 」
ポール・サイ
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