ヤクルト・大西広樹、今季のチーム登板王が目指す〝○○の大西〟の確立
【球界ここだけの話】実りある1年を過ごし、さらなる高みへ。進化の歩みを止めることはない。リリーフとして今季チーム最多の60試合に登板したヤクルト・大西広樹投手(26)のことである。2020年にドラフト4位で入団してから5年。毎年、登板数を増やしてきた。ステップアップの原動力は限界を決めずに立ち向かう精神だろう。「俺はできる。もっとできる」。6年目となる来季の目標を聞いたとき、その精神が垣間見えた。 「一番いいところで投げたいですよね。やっぱり投げるんだったら、一番を取りたい。今年は(チームの)中継ぎで一番投げられたけど、まだまだ。チームは5位やし。強いチームで一番いい成績を出したい」 大西がいう「一番いいところ」とは、守護神のことだろうか-と想像したが、そうではなかった。「決めたくないんですよね。抑えをしたいとか、勝ちパ(ターン)に入りたいとか言っても、先発に回った方が1軍に残れる、チームのプラスになることだってあるやん。チームに求められていたらそれでいい」。一番いいところとは自分が一番必要とされる場面。オフの期間は自分自身で役割の可能性を狭めることはせず、来季がスタートしたとき、どんな起用にも対応できるように準備を整えていく考えだ。 その上で目指すのは、〝○○の大西〟の確立である。今季はリード、同点、ビハインド、火消し、回またぎ、セーブシチュエーションなど、さまざまな局面で登板し、9勝1敗、23ホールド、1セーブで防御率1・34。フル回転の活躍でブルペンを支えてきたが、「まだ〝便利屋〟だった。(定位置を)決められる信頼がないからやろうけど。今年は(チームに求められ)中継ぎで一番投げて、理想の形ではある。でも(七回や八回の男などの定位置は)確立されていない。そこは自分として納得していないというか、満足していない」。自らの意思で目指すポジションはない。だが、与えられたポジションを自分のものにする覚悟を持っている。 〝○○の大西〟確立に向け、来季は「(状態が)いい日を多くしたい」と思い描く。今季の6月は10試合に登板し、防御率0・00。無双状態で「心も体もゾーンに入っている感じ。マウンドに行くのも、投げるのも怖くないし、初球がボール球になっても怖くなかった」と振り返るが、自身の感覚としてその期間は長くは続かなかったという。「そのメンタルを経験できたので、来シーズンはその状態を開幕からつくっていけたら」と理想を掲げた。
11月いっぱいはノースロー期間に設定しており、現在は平均球速150キロ台を目指してウエートトレーニングで全身の筋力強化に励んでいる。年を重ねるごとにすごみが増すタフネス右腕。来季もまた、もうひと段階ステップアップした姿を見せてくれるだろう。(武田千怜)