学術が目指すべき社会と人類の行く末 宇宙に生命を探すのはゴールではない
人間の作業とロボットの作業を切り分けるべき
「ロボットは人間に代われるか?~介護と廃炉現場で見えたもの」では、有料老人ホームを運営するオリックス・リビング企画部広報課の入江徹課長が、「介護の現場は今後、人がすることと介護ロボットがすることを切り分けるべき。機転のきいたコミュニケーションは人が行い、介護ロボットに任せて良い業務は任せて省力化すればよい」と主張した。 現場で役に立たない介護ロボットも多いと指摘。入江課長は、「メーカーや技術者にはやる気があり、一般の人もロボットで良いと言う人もいるが、介護の現場が介護ロボットに否定的なので協力があまり得られず、結果的に研究室や工場で想像しながら開発するので、使いづらいロボットが出来ているのではないか」として、介護の現場とロボット開発側との協力関係の希薄さが原因との見方を示した。 福島第一原発の廃炉作業に使うロボットの開発にかかわる東京大学大学院工学系研究科の淺間一教授は、これまで、コンクリートポンプ車の遠隔操作による冷却、建設機械の遠隔操作によるがれきの処理、内部の調査、除染にロボットを用いてきた現状を説明。 確認できなかった障害物に動きを阻まれるなどして、回収不能になるロボットも。淺間教授は、「放射線量が高いところで使うと、コントローラやCCDカメラなどの半導体部品が壊れてしまうので、放射線に強いロボットの開発も必要。水の中の作業が増えるので耐水性も必要になる」と説明した。 「ロボットといえば二足歩行のイメージがあるのに、実際の現場で使われるケースが少ないのはなぜか」という会場からの質問に対し、淺間教授は「二足歩行ロボは一つのチャレンジであり、まだ発展途上」、入江広報課長は「なぜ、二足歩行である必要があるのかという疑問がある。現場では特に必要性を感じない」とそれぞれ答えた。
宇宙に生命を探して「生命とは何か」の答えを出す
「地球外生命(1)人知は神の摂理(生命)を超えられるか」では、海洋研究開発機構 深海・地殻内生物圏研究分野の高井研分野長が、「個人的に、高等な生物にまで進化した地球はレアな存在だと思うが、宇宙に知的な生物がいると仮定して考えるのはありだ。宇宙に生命を探すのはゴールではない。それを見つけることで、生命とは何かの答えが出せる」などと持論を展開。 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科の木村大治教授は、宇宙人とのコミュニケーションについて、「われわれの周辺に存在する他者だって、宇宙人みたいなもの。実はアンドロイド、あるいは夢かもしれない。そんな不確かな他者たちのコミュニケーションと、宇宙人とのコミュニケーションは近いのではないかと思う」と語った。 (取材・文:具志堅浩二)