「ゴルフは挑戦があってこそ一層楽しめるスポーツです」上達を止めないために必要な杉原輝雄のゴルフ哲学【“甦る伝説”杉原輝雄の箴言集⑬】
1960年代から2000年代初頭まで、50年の長きに渡って躍動した杉原輝雄。小柄な体、ツアーでは最も飛ばない飛距離で、当時トーナメントの舞台としては最長の距離を誇る試合で勝ったこともある。2打目をいちばん先に打つのだが、そのフェアウェイウッドが他の選手のアイアンより正確だった。ジャンボ尾崎が唯一舌を巻いた選手で、「マムシの杉原」、「フェアウェイの運び屋」、「グリーンの魔術師」「ゴルフ界の首領(ドン)」と数々の異名をとったのも頷ける話だ。「小が大を喰う」杉原ゴルフ、その勝負哲学を、当時の「週刊ゴルフダイジェスト」トーナメント記者が聞いた、試合の折々に杉原が発した肉声を公開したい。現代にも通用する名箴言があると思う。
パターは生涯一本
ーー「距離感とは見た感じをパターで表現することや。なら一本を使い続けることが有利やろ」 皆さんはパットでの距離感は、どういうふうにとらえておいでだろうか。 ボクは距離感というのは、単に目で見て感じとったものでないんやと考えています。距離感とは、「目で見て、それに自分のパターの打つ感覚を混ぜ合わせて算出した距離、に対する“勘”」であると思うています。 グリーンには、速いとか、重いとかの“質感”があって、この距離はこれくらいの強さで打つという、自分だけの“加減”もまた距離感の分野やと考えています。それならば、パターをあれこれ替えるいうことは、替えたパターに対する新たな“加減”という作業が必要になってくるんやと思います。その分、複雑になって、そんなん、ボクはようしません。 たとえグリーンが速くても重くても、使い慣れたパター1本に絞ったほうが、パットの単純化にもつながり、技術にも磨きがかけやすい、思うんです。 先程もいったように、距離感というのは目で測る勘には違いありませんが、その答え(何メートル)を出すにあたっては、自分のパターが無意識のうちに基準となっているんです。 ゴルフは単純なほど明快になりますのや。複雑にすると、どこまでも複雑になる危険性も秘めています。そうなると自分の能力では手に負えんいほど難しくなります。考えすぎると、考え負けになってしまうことだってありますのや。 特徴の異なった複数のパターを、グリーンの違いで使い分けることは、それだけゴルフ――パッティング――を複雑にするということを忘れてはいけません。 ボクはパターも女房も、生涯1本(人)主義なんです(笑)。
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