広島の悲劇に涙 キューバ革命指導者、チェ・ゲバラが遺したアートな世界
キューバ革命で指導的役割を果たしたチェ・ゲバラの長男、カミーロ・ゲバラ氏が初来日した。父チェの没後50年という節目に、生前に本人が撮影した写真約240点を集めた「写真家チェ・ゲバラが見た世界」が9日から都内で開催される。父親が58年前に訪れた日本は、カミーロ氏にはどう映るのか。
雑然と残されていたチェのファインダー越しの世界を写真展に
常にカメラを持っていたというチェ。共に戦った日系ボリビア人のフレディ前村を主人公にした映画「エルネスト」(10月6日公開、主演:オダギリジョー、監督:阪本順治)にも、チェがニコンS2を愛用する様子が描かれている。 「写真展を始めたのは1991年ごろでした。母の友達でキューバ人のアーティストが、『チェがカメラを構えた写真があるから、きっと彼自身が撮った写真もあるんじゃないの?』と。父はプロの写真家ではなかったので、きちんと保管されていたのではなく、机の引き出しの中だったり、あちこちに雑然と残されていたんです。それを時代順にわかるような形でセレクションして、アートとしての価値があるものも集めていって、キューバで初めて写真展を開いたんです」 そのあと2001年ごろからは、スペインの写真家でキュレーターでもある人物がさらに専門的なセレクションをして、国際的な規模で写真展を開くようになったという。 「チェの残した写真を見て、彼がどんな生涯を送った人物だったかということを知ってほしい」
史実も語り、アートとしても訴えかけてくる写真たち
カミーロ氏自身、1967年に39歳で処刑されたチェとは5歳までしか暮らしておらず、それもベッタリ一緒にいたわけではない。だから、詳しい記憶はない。残された写真は、偉大な父親の生涯を知る手掛かりになった。 「若いころ、キューバ革命のころ、そのあと工業大臣になったころや、またボリビアでの戦い……。チェの撮った写真によって、その時代に起きたこと、歴史についても段階ごとにわかります。そしてもうひとつ、アートとして、美的な観点でも見てほしい」 世界的にその名前とビジュアルが知られた人物を父親に持ち、子ども時代にはどんなプレッシャーがあったのか。 「普通の子どもでしたし、いまもただの普通の人間ですから(笑)。たしかにプレッシャーはないことはないのですが、ポジティブな面で捉えていかなければいけない。父が偉大だってことに誇りもありました」