激変したJALのファーストクラス。顧客も喜ぶ「コストカット」でやめたこととは〈経営破綻したJALを再建した稲盛和夫の改革〉
事業欲の強い経営者は危うい
もう一つお話しすると、私は事業欲の強い経営者は危ういと考えています。 世の中には、業績が好調な時期にどんどんお金を借りて、事業を拡張する経営者がいます。「チャンスの神様には前髪しかない」という言葉もありますが、やれるときにやるべきだと思い込んでいるのです。おそらくは楽観主義なのでしょうが、そうして会社を潰した方を何人も見てきました。 一定以下に自己資本比率を落としてしまうと、環境が変化したときに対応できません。具体的には、自己資本比率が10%を割るようならば、金融以外の業種では絶対に投資をしてはいけません。とくに、ホテルや飲食店のような先に設備投資をしなければならない業種では、どこかに踊り場をつくらなければ資金繰りがもちません。 1990年にバブルが崩壊し、2000年前後に金融危機があり、2008年にリーマン・ショック、2011年に東日本大震災があって、2020年からはコロナ禍がありました。100年に一度や1000年に一度といわれることが、これほどの頻度で起きているのです。何も起こらない前提で経営をしていたら、うまくいきません。 もちろん、BCP(事業継続計画)を立てておくことも必須です。しかし、コロナ禍を予想できた人は少ないでしょう。予想できないことが起こっても、キャッシュが手元にあれば切り抜けられます。自己資本比率をある一定以上に保つ経営が必要なのです。 写真/shutterstock ---------- 小宮一慶(こみや かずよし) 経営コンサルタント。株式会社小宮コンサルタンツ代表。十数社の非常勤取締役や監査役、顧問も務める。1957年、大阪府堺市生まれ。1981年、京都大学法学部卒業。東京銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。1984年7月から2年間、米国ダートマス大学経営大学院に留学。MBA取得。帰国後、同行で経営戦略情報システムやM&Aに携わったのち、岡本アソシエイツ取締役に転じ、国際コンサルティングにあたる。その間の1993年初夏には、カンボジアPKOに国際選挙監視員として参加。1994年5月からは、日本福祉サービス(現セントケア・ホールディング)企画部長として在宅介護の問題に取り組む。1996年に小宮コンサルタンツを設立し、現在に至る。『できる社長は、「これ」しかやらない』『経営が必ずうまくいく考え方』(ともにPHP研究所)、『株式投資で勝つための指標が1冊でわかる本』(PHPビジネス新書)、『経営者の教科書』(ダイヤモンド社)など、著書多数。 ----------