代表初招集の鈴木武蔵は待望のゴールゲッターとなれるのか?
同じ図式のなかに置かれたいま、本能に命じられるストライカーだった武蔵は「我慢する、ということを覚えている」と論理的な動きをも身につけつつある。 「最初のころの練習では『動きすぎだ』とよく言われました。どのタイミングで、どこに自分が動かなければいけないのか、という予測の部分を練習のときからすごく言われています」 そして、サンフレッチェ時代のペトロヴィッチ監督のもとでコーチを務め、監督に就任してからは3度のJ1制覇を達成した森保監督もまた、日本代表の練習で「我慢」を求めていると武蔵は言う。 「なるべくペナルティーエリアの幅で動きながら、味方からの決定的なパスを受けるためのポジション取りや、相手の背後の取り方を求められています」 卓越したボールキープ術とポストプレーで周囲を生かしてきた、FW大迫勇也(ベルダー・ブレーメン)が選外となった今回。武蔵と鎌田大地(シントトロイデンVV)の初代表組コンビが抜擢された最前線は、これまでのプレースタイルそのものからの変革が求められる。 まだまだ荒削りな部分も多い武蔵だが、裏返せばそれだけ成長する余地が大きいということ。何よりも縦へ抜け出す圧倒的なスピードに、力強さとダイナミックさをも伴わせるフォワードは、これまでのどの代表においても稀有な存在だったと言っていい。 「そこが自分の一番の特徴だし、それでJリーグでも点を取ってきたので。自信をもって、フォワードなのでとにかくゴールを狙っていきたい」 ストロングポイントと自負するスピードとパワーを南米の難敵へ真っ向からぶつけ、ゴールネットを揺らせば――武蔵は昨年11月のDF山中亮輔(当時横浜F・マリノス、現浦和レッズ)以来、日本代表史上で32人目の「A代表デビュー戦でゴールを決めた選手」となる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)