舞台“桜の園”は「福岡公演が多分一番…」 佐賀出身、荒川良々さんインタビュー
独特の存在感で舞台やドラマなどで活躍する俳優の荒川良々さん(50)=佐賀県小城市出身=。初めてチェーホフの戯曲「桜の園」(演出、ケラリーノ・サンドロヴィッチ)に挑みます。他にも初めてのことばかりという未知の状況への向き合い方に「らしさ」がにじんでいました。 【写真】松尾スズキさんと2人で人気劇団「大人計画」を旗揚げした元演劇家の女性 -チェーホフの戯曲は初とか。 ★荒川 チェーホフも初めてだし、翻訳作品をやるのも初。演出のケラさんとも初めてです。 -「初めて」のことが多いと普段とは心構えが変わりますか。 ★荒川 特に身構えたりということはないです。自分一人で考えてもしょうがないですから。相手の芝居を受けてということが大きいと思っています。 -19世紀末のロシアを舞台に、没落する貴族と台頭する新興商人の対比を描く。商人のロパーヒンを演じることについて、所属する「大人計画」主宰の松尾スズキさん=北九州市出身=がメルマガで「ほとんど主役じゃないか」と書いていた。自身の受け止めは。 ★荒川 全く主役じゃないですよ、そんなの。ただ、今まであまりやったことのない役だし、稽古中ずっと力が入っているような気はします。初めてという要素は当然あるし、普段だったら稽古場でウケたいというのがあるんですけど、(本作は)面白いセリフとかギャグもないので。 -芝居でウケたい? ★荒川 大人計画でやっているからでしょうね。分かりやすいじゃないですか、やっていてお客さんから笑いがすぐバンって返ってくるのって。ただ「はい、面白いでしょ」って提示したら下品になっちゃうとも思うんです。醸し出すじゃないけど、一生懸命やって結果的に「なんか面白いよな」でいいと思うようになってきましたね。 -ケラさんの演出は。 ★荒川 細かいですね、細かい。初めてだからこれが当たり前なのかどうか分からない。楽しいですけどね。 -知らなかったこと、初めてのことを楽しめるタイプですか。 ★荒川 若い頃は台本読んで「つまんねえな」とか思いながらやってた部分もありますけど、面白さを見つけなきゃ損だなと思うようになって。何でもいいと思うんです、照明がきれいとかね。 -俳優を25年以上続けてきての変化なんですね。 ★荒川 そうですね。思えば、みたいな感じですね。佐賀から福岡に出て、いろんな人と出会って音楽や本を知って。スチャダラパーを通して(劇作家の)宮沢章夫さんの本とか、派生して別役実さんの戯曲とかも読むようになって。ニューヨークに行って帰ってきて東京の小劇場で見たのが松尾さんの作品でした。面白いと思っていたら、友人に「試しに(オーディションを)受けてみたら」って言われて。だから流れ着いたみたいなもんですね。 -演劇は稽古期間が長い。稽古ならではの面白さはありますか。 ★荒川 自分自身の稽古はあまり好きじゃないです。でも人の稽古を見てるのは好きなんです。誰かが演じていて、今回ならケラさんから何か言われた時に変わっていくじゃないですか。その過程を見るのがぜいたくだなって。 -東京を離れて九州での公演となると心持ちは変わりますか。 ★荒川 変わりますね。食いもんがうまい。いまだに実家からしょうゆとみそを送ってもらってます。東京ではうどんのだしも有楽町の福岡のアンテナショップに買いに行きます。なかなかないですもんね、福岡のうどん。「来年、資さんうどんが東京にくる」って松尾さんがすごい言ってました。 -ドラマや映画で荒川さんの顔を見たことがある人でも、佐賀出身だと知らない人も多そう。 ★荒川 そうですね。観光大使とかやってないし。別に隠してるわけじゃないですけど。 -東京、大阪公演を経て福岡公演(1月18~26日)で千秋楽。 ★荒川 福岡は3度も昼、夜2回公演がある。(共演する福岡市出身の)井上芳雄君が欲張っちゃって(笑)。でも、福岡が多分一番出来がいいと思います。仕上がって。まぁ、みんなもう飽きてやってるかも分かんないですけどね。 (文・佐々木直樹、写真・柿森英典)