選手村跡地で全国初「水素で発電するまち」を実用化 <シリーズSDGsの実践者たち>【調査情報デジタル】
ただ、住宅や商業施設などで使われているすべての電力が、100%水素からつくられているわけではない。既存の電力系統や、太陽光発電による電気と組み合わせて、電力使用の最適化を図っている。 その際に活用されているのがAIだ。まち全体のエネルギー情報を集約して、AIが電気需要のピークを予想。最適な電力を組み合わせ、共用部の電力使用などを調整しながら、ピーク時の電力使用を抑えるエネルギーマネジメントをしている。どのエネルギーからどれだけの電力をつくっているのかは、屋外に設置されたパネルで確認できる。 水素エネルギーの活用はパイプラインなどを企業が整備し、運営を行っている。オリンピックとパラリンピックの際に、選手村の一部で水素エネルギーを活用したことを発展させて、まち全体に広げた。低炭素化や省エネルギー化を目指した、環境先進都市のモデル地区となっている。 ■水素エネルギーへの期待と普及への課題は 選手村跡地での水素製造は、前述した通り都市ガスから水素を取り出す方法だ。その際には二酸化炭素も発生する。現状では発生した二酸化炭素は、大気中に放出されている。このように化石燃料から製造され、発生した二酸化炭素を放出する水素は、グレー水素と呼ばれている。 同じように化石燃料から製造されて、発生した二酸化炭素を回収または貯留して、大気中に放出しない水素はブルー水素。再生可能エネルギー由来の電力を利用して、水を電気分解して生成される水素はグリーン水素と呼ばれる。グリーン水素は製造過程で二酸化炭素が排出されない。 このように水素は、製造過程での二酸化炭素の排出が少ない順に、グリーン、ブルー、グレーと色で表現されている。また、原子力発電による電気を利用してつくられたものはピンク水素と呼ばれる。 東京都では現在活用しているグレー水素から、ブルー水素やグリーン水素の活用を拡大して、2030年までに水素の社会実装化を目指す。その上で、政府がカーボンニュートラルを目指している2050年には、産業のあらゆる分野でグリーン水素の活用を広げていく方針だ。