セルティックで大ブレイクしたFW古橋亨梧が大迫勇也不在の森保ジャパンでどう存在感を示すのか?
岐阜からオファーが届いたのは、もうプロは無理かもしれない、という思いが脳裏をかすめ始めていた2016年の年末。ルーキーイヤーはリーグ戦で全42試合に先発し、プレー時間も3646分を数えながら6ゴールと不本意な結果に終わった。 「プレッシャーを感じて、思うようなプレーがなかなかできていなかった」 オンライン取材で2017シーズンをこう振り返った古橋は、プロの世界で生き残っていくために、自らに居残り練習を課し続けていたと明かした。 「チームの練習が終わった後に、ひたすらシュート練習をしていましたね。30分、1時間とやっていた日もあったし、スタッフから『はよ帰れ』と言われるまでずっとシュートを打っていました。苦しい時期にあのようなシュート練習をしていたから、いまはどこにゴールがあるのかが感覚的にわかってシュートを打てているし、それがゴールにつながっている。あの時期があったから、いまの自分があると思っている」 迎えたワールドカップイヤーの2018シーズンも開幕から26試合続けて先発。奪ったゴール数が11とほぼ倍増していた7月末に、神戸から望外のオファーが届いた。 夢にまで見たJ1デビューから2戦目で初ゴールをあげた、8月11日のジュビロ磐田戦はMFアンドレス・イニエスタが来日初ゴールを決めた一戦でもあった。それまでテレビ越しに見るだけだったレジェンドは、こんな言葉を介して古橋に魔法をかけた。 「もっと君のよさを出していいよ」 紅白戦や練習でイニエスタからかけられた言葉で、古橋は「自分の武器は縦へのスピードとドリブル、そして相手ゴール前へ飛び出していく動きなんだ」とあらためて認識。岐阜時代の居残り練習で骨の髄まで染み込ませたシュートの感覚と融合させた。 デビューからの約3年間で、古橋はJ1リーグ戦で95試合に出場して42ゴールをマーク。その間に森保ジャパンで日本代表デビューも果たし、モンゴル、タジキスタン両代表とのワールドカップ・アジア2次予選で3ゴールをマークしている。 プロになるのにも苦労した男が歩んできたシンデレラストーリーは、岐阜で人知れず積み重ねた努力、そしてイニエスタとの邂逅を介して一気にブレーク。昨夏から戦いの場を移したスコットランドの地でも右肩上がりの軌跡を描いた。 「プレーしていくうちに、自分の強みが通用しているという感覚はありました。でも、僕がゴールを決められるのは、たくさんの選手が後ろからボールをつないでくれるから。僕は決めるだけのポジションなので、支えてくれる周りの選手に感謝しかないです」 日本でプレーしているときから岐阜、そして神戸のチームメイトたちへ感謝の思いを常に口にしてきた。謙虚で飾らず、それでいて貪欲に成長を求める姿勢も忘れない古橋の戦いはいま、舞台を代表に移して新たな局面を迎えようとしている。 自身と入れ替わる形で神戸へ加入したFW大迫勇也(32)が、森保ジャパンではほぼ不動の1トップを担ってきた。必然的に古橋はサイドでの起用が多かったが、その大迫がコンディション不良で6月シリーズには招集されていない。ポストプレーヤーの大迫とは異なるスタイルで、セルティックでゴールを量産した古橋の存在感が必然的に増してくる。