飲食店を仲睦まじく経営するご夫婦。2人の食事代は経費になるの? 税理士が疑問に答える③
確定申告の時期になると、レシートの整理に追われる人が多いのではないでしょうか。そこでよく直面するのが「この領収書は経費になるのか」という疑問。税理士・廣岡実さんの著書「お金と税金のことが90分でわかる本」(アスコム刊)から、経費になるもの、ならないものについて解説します。 自らの体験で、お金の専門家になった女性はこちら * * * ■ 飲食店の夫婦の食事代は経費にできるのか? 夫がシェフで妻が経理を担当しているご夫婦です。仕事の後に2人で食事に行った場合、この食事代は経費にできるのでしょうか?公私にわたるパートナーだから、会話の内容には子どもの将来のこととか、ご近所とのお付き合いの話、日常生活のいろいろな話題が上がってくるでしょう。 でも、一緒に仕事をしているのだから当然、仕事の話題も全体の何割かは占めるに違いありません。だとすれば理論上、2人の食事代のうち何割かを経費とすることができるはず。 これを会計用語で支出した金額を「按分」するといいます。 実務的に考えて、食事代が1万円だったとすれば、このうち5000円を経費として処理し、残りの5000円は社長への貸付金として処理をします(帳簿上は「事業主貸」となります)。 ■ ひとりランチや保育料は経費にできるのか? 経費にはそもそも売上に貢献するとしても「社会通念上」認められないものもあります。例えば、お昼に食べた牛丼だって、スーパーで買った食材だって、食べないと仕事にならないから売上に貢献している、と言い張ることもできそうですが、これは「社会通念上」経費と認められないのです。 普通に考えてそれは経費でなく「生活費」ですよね、ということです。 仕事をするために子どもを保育園に預けた場合の保育料はどうでしょうか。現在の税法の中では保育料は「家事費」と判断されるため、経費に入れることはできません。
■ 人間ドックは経費になるのか? よく「人間ドックの費用は経費になりますか?」という質問を受けますが、確かに事業主や社長の健康維持のための検査は、広い意味では売上の獲得に貢献するかもしれませんが、これは必ずしも「利益獲得に結びつくもの」とみなされません。あくまで自分の健康管理のための行為とされるため、残念ながら経費にはできません。 しかし、もし再検査が必要になって、治療が必要な病気が見つかった場合は最初に受けた人間ドックの費用もすべて「医療費控除」の対象になります。 また、会社の代表者や幹部を含めてすべての従業員に同じメニューの人間ドックを行うのであれば、それは「福利厚生費」となり経費になります。ただし、社長だけ2日間のスペシャルな人間ドックをやったとしても、それはプライベートな利用になるので経費になりません。 ■ パソコン代は経費になるのか? パソコンなど、10万円以上の支出は「一時の経費」でなく、「固定資産」として「減価償却の方法で経費化」をしなければいけません。減価償却の対象となるものは一定額以上の建物や設備類、車両、工具、家具、電化製品、事務機器などで、耐用年数で割って各年の経費として計上します。 そもそも、なぜ「減価償却の方法で経費化」しなければならないのでしょうか?固定資産も、他の経費と同じように「売上に貢献する」ものです。ただ、固定資産は数年間にわたって利用して売上獲得に貢献するわけですから、他の、例えば交通費などのように、代金を支払った時に一度に費用にするのは不合理といえます。 ■ 200万円の自動車を経費にする場合は? 例えば新車の営業車を買ったとします。価格は200万円。この車を営業に使って売上獲得に貢献するのは1年だけでしょうか? そんなことはありません。数年から10年は貢献することになります。だったら、200万円の営業車を10年間にわたって使用することによって売上を獲得できたことになります。