藤井 風やyamaも出演、『tiny desk concerts JAPAN』知られざる番組誕生秘話
ホームラン級の好発進と今後の展望
『tiny desk concerts JAPAN』のスタートに向けてNHKの局中をロケハンするも、「スタジオじゃないところで音出しすると業務の妨げにもなりかねないし、他の階にお邪魔して撮るのはありえない」という事情から、自分たちが働くフロアの会議スペースを収録場所として採用。床が赤いカーペットだったことから、「赤と白」で統一すべく棚のみ作り替えたが、資料や小物はもともとオフィスにあったものがそのまま飾られているそうだ。 * 今年3月16日に放送された初回は、藤井 風が登場。音楽の喜びを体現するような歌と即興性、Yaffleら仲間たちと奏でる至高のアンサンブルは、『tiny desk』で求められるパフォーマンスの理想形というべきもの。SNS上でも絶賛の声が溢れかえった。 「NHKで『tiny desk』を制作するにあたり、日本のアーティストを海外に知らしめることが大きな役割だと思っていて。 藤井さんはアメリカやタイ、インドなどでも人気を獲得していますし、グローバルなポテンシャルという点でも最有力の候補として、この企画が立ち上がった当初からお声がけしていました。でも、ここまでの反響は想像以上でしたね」 藤井のパフォーマンスは後日、NPRで記事化されたほか、同局のYouTubeチャンネルにも掲載され、800万を超える再生数回を記録。収録を見届けたNPRチームも手放しで称賛した。 「収録にはNPRのプロデューサー3人が来日して立ち会ってくれたのですが『哲也、これはホームランだね』と言ってもらえました。『風は素晴らしいね』って。藤井さんのミュージシャンシップ、音楽力はグローバルに響くんだなって思いました」 * 5月からスタートしたレギュラー放送で、最初に出演したのはKIRINJI。現在は堀込高樹のソロプロジェクトとして活動しており、独自の詞世界と洗練されたサウンドが熱心なファンを惹きつけ、若い世代からも支持を集めている。シティポップの文脈とも繋がりをもち、アジア圏でも人気が高い実力派のベテランを、藤井 風の次に起用したのは英断だろう。 「NPRチームは、自分たちが公共放送のジャーナリストであるという自負から、アーティストのキュレーションに対して誇りをもっているんですよ。そういう姿勢にも刺激を受けつつ、藤井さんが開いてくれた可能性を広げ、世界に紹介していくべき日本独自の音楽性を持つのは誰だろうと考えたときにKIRINJIが思いついた」 KIRINJI楽曲にフィーチャーされたことのあるYonYon、Maika Loubtéの2名がコーラスで参加した特別編成。小田朋美のキーボードにも注目。「NPRチームはスタンドなんていらない、テーブルのうえに本を積めばいいじゃないかと言うわけです。実際やってみると『tiny desk』っぽくなるんですよ」 * 6月は君島大空が登場。繊細なメロディと前衛的なサウンドを兼ね備え、同業のミュージシャンも羨む圧倒的な才能の持ち主が、バンドセット「合奏形態」で別次元のライブを披露した。凄まじいスキルがあるからこその強烈なバンドサウンドに加えて、ピアノの音をスマホで録音し、その音をギターのピックアップで拾い、エフェクターで加工するという西田修大の独創的なアイディアも冴え渡る。 「たまたま君島大空さんのライブを観て、合奏形態による爆音のライブに圧倒されまして。(大音量を出せない)『tiny desk』に出てもらったら面白そうだと思ったんです。とてつもない才能ですよね。プリンスみたいだなって。こんな人いるんだってびっくりしました」 * そして、7月は冒頭のとおりyamaが出演。月1回ペースで放送され、強い意思を感じるラインナップが続いている。今後の展望についても語ってもらった。 「『tiny desk concerts JAPAN』はこの先、9月30日(月)から総合テレビでも放送していく予定です(午後11時~)。これまでの回は海外に届けることを意識してきましたが、『tiny desk』の文化をもっと日本に広めていきたいと考えています。あと、『tiny desk』の魅力はネット上でカタログ化されている点にもありますよね。僕らとしてもレギュラー放送のストックを貯めていきながら、どこかのタイミングでネットにアップして、アーカイブをいつでもどこでも視聴できるようにしていければいいなと。世界中からアクセスされる音楽の財産を作っていけたらと思っています」 音楽番組の制作を通じて、日本の音楽シーンを長年見守ってきた柴﨑さんは、この国のポップミュージックの現状をどのように捉えているのか。 「あまり楽観的ではないですが、希望は持っています。『tiny desk』を始める前も『SONGS OF TOKYO』(2018年1月~2023年4月まで放送)という国際放送の番組で、日本国外向けにいろんなアーティストを紹介してきましたが、結局この10年くらい、ポピュラリティという点に関しては韓国勢、K-POPの後塵を拝しているわけですよ。そのなかで、日本の音楽はどうやったらプレゼンスを高めていけるのか。〈Gacha Pop〉という言葉も生まれたように、日本の音楽はいい意味で多様性があるので、いろんな音楽性の人たちを紹介していくことが大切だと思っています。あとはYOASOBI、新しい学校のリーダーズのように海外でライブを行なう人たちが去年くらいから急激に増えていますよね。今はそういう波が来ていると思いますし、そこからもっとグローバルに愛されるアーティストが出てくるといいですよね。『tiny desk』がその一助になればいいなと思います」 --- 『tiny desk concerts JAPAN』 出演:yama 放送予定: <NHK WORLD JAPAN> 2024年7月29日(月)0:10~、5:10~、12:30~、18:30~ <NHK総合> 2024年9月30日(月)午後11時~放送 (※出演アーティストは決定次第発表)
Toshiya Oguma