【疑惑の鹿児島県警】内部情報を受け取った“とある記者”とは何者か “キーマン”のネットメディア代表が舞台裏を明かす「まさか報道機関にガサに入るとは」
“とある記者”の正体
「本部長による犯罪行為隠蔽(いんぺい)が許せなかった」――。鹿児島県警前生安部長が県警トップを名指しで告発するという前代未聞の事態。複雑に入り組んだその背景事情と腐臭漂う県警の内情を、今回の情報漏えい事件の「キーマン」である福岡のネットメディア代表が明かす。 【写真を見る】警察官の盗撮事件を隠蔽した疑惑が指摘されている野川本部長 ***
告発の主、鹿児島県警の本田尚志・前生活安全部長(60)が国家公務員法(守秘義務)違反容疑で県警に逮捕されたのは5月31日のこと。その5日後の6月5日、鹿児島簡裁で行われた勾留理由開示手続きの席において、 「職務上知り得た情報が書かれた書面を、とある記者に送ったことは間違いない」 本田氏は事実関係を認めた上で、背景に県警トップ、野川明輝本部長(51)の存在があったことを暴露したのだ。 本田氏から県警の内部情報を受け取った“とある記者”とは何者なのか。県警は本田氏による情報漏えいをいかにして把握したのか。これらの疑問を解消するために避けて通れないのが、福岡を拠点にするネットメディア「ハンター」の存在である。 まず、“とある記者”とは、「ハンター」に鹿児島県警に関する記事などを寄稿していたライターの小笠原淳氏である。小笠原氏によると、問題の資料は4月3日に送られてきた。その場で開封した資料には〈闇をあばいてください〉とあり、県警枕崎署員による盗撮事案や、別の現職警察官による「巡回連絡簿」を使ったストーカー事案の詳細が記されていた。 「これだけ具体的なことを書いている以上、ウソではないだろうなとは思ったのですが、私は普段は札幌にいるのですぐには動けない。そこでこの資料を『ハンター』と共有しておこうと思ったのです」(小笠原氏)
“お前ら、腐ってるな”
そうして問題の資料をPDF形式で受け取ったのが、「ハンター」代表の中願寺純則氏である。 「資料は受け取ったものの、小笠原さんと“ウラ取るのが難しいね”と話し合い、ちょっと待つかということになりました。で、時間がたつうちに『ハンター』の事務所に県警のガサが入ったのです」 そう語る中願寺氏が運営する「ハンター」は、2年前から鹿児島県警のさまざまな不祥事を書き続けてきた。その末の家宅捜索だった。 「全ての始まりは県警OBの息子による『強制性交事件』です。事件があったのは2021年9月。被害者は新型コロナウイルスの療養施設で働く女性で、加害者は鹿児島県医師会の男性職員です。この男性職員の父親が県警OBで、そのせいか、鹿児島中央署は性被害を訴える女性の告訴状の受理をかたくなに拒否していたのです」(同) この事件の取材過程で中願寺氏はある資料を入手する。県警の内部資料「告訴・告発事件処理簿一覧表」。そこには、問題の強制性交事件のものも含まれていた。 「23年に『ハンター』で『告訴・告発事件処理簿一覧表』について写真付きで記事にしたのですが、県警は内部資料の流出を一向に公表しようとしませんでした。そこで今年2月、私はその資料を持って県警に行き、“これを渡すから流出を認めて謝罪してほしい”と迫った。ところが県警の職員はかたくなに受け取りを拒否。私は“お前ら腐ってるな”と捨てぜりふを吐いて帰ってきました」(同)