韓国大統領の弾劾訴追案、可決されたら何が起きるのか?過去の事例から考察
アジア第4位の経済大国で起こった「戒厳令騒動」――韓国の尹錫悦大統領はいま、弾劾の危機に直面している。野党議員らは、尹氏が戒厳令を使って政党活動を禁止し、メディアの検閲を行おうとしたことは憲法上の義務に違反する反逆行為だと非難している。国会は今週、弾劾動議の採決を行う予定だ。その先に、何が起こるのか? <弾劾に関する法律上の規定は> 韓国の憲法では、大統領が「公務の遂行において憲法や法律に違反した」と判断された場合、国会が大統領に対する弾劾訴追案を提出することを認めている。 弾劾訴追案が可決されるには、一院制議会で3分の2以上の賛成が必要だ。その後、憲法裁判所は大統領の罷免を認めるかどうか審理を行う。 <野党は弾劾案を可決できるか> 現在国会は、「共に民主党」をはじめとする野党が多数派を占めている。しかし、大統領弾劾に必要な200議席には合計で8議席足りない。 尹氏率いる与党「国民の力」の一部議員は、戒厳令発令に強く反対した。しかし、そのうち何人が弾劾を支持しているかは明らかではない。 <弾劾案が可決されたら> 弾劾案が可決されれば、次の段階は憲法裁判所での審理となる。この間、首相が大統領代行を務める。裁判所は口頭弁論を通じて双方の意見を聴取し、最長6カ月以内に決定を下す。 9人の判事のうち6人が弾劾を支持すれば、大統領は罷免される。 ただ現在のところ憲法裁判所判事は3人が欠員で、現職は6人のみ。憲法裁は、弾劾は7人以上で審理するという規定を免除されているが、同裁判所が定数に満たないまま審理を行うかは不明だ。 <大統領が罷免されたら> 尹氏が罷免されるか辞任した場合、60日以内に大統領選挙が実施されなければならない。 2017年3月、裁判所は共謀疑惑をめぐる当時の朴槿恵大統領の弾劾を承認し、同年5月に選挙が行われた。朴元大統領はその後、別の刑事裁判を経て服役した。 2004年には当時の盧武鉉大統領に対する弾劾訴追案が可決されたが、裁判所は弾劾訴追を棄却し、盧氏は大統領の職務に復帰した。