発達障害の当事者の目線で 福岡市に就労支援のスクールが開校
教室の設計にも配慮が
スクールは発達障害の人に配慮した空間です。壁紙は白と灰色、机は木目調で、清潔感のあるシンプルな内装が印象的です。「壁紙に文字やイラストなどの情報が入っていると、それだけで注意がそれてしまいます」と片渕さんが説明してくれました。 パソコンの電源コードなどが絡まると、気になって集中できなくなることもあるため、机の上はスッキリしています。椅子に座り続けることができない多動性の人のために、立ったまま作業ができる脚の長い机なども備えています。
支援グッズもあり、音に過敏な人には耳栓やイヤホンを用意し、過集中を防ぐために残り時間を可視化できるタイマーも貸し出します。
「安心して挑める場に」
「今日は何についてお話ししましょうか」。同校ではライフコーチが相手に問いかけながら、様々な考えや選択を引き出す「コーチング」の手法で面談を進めます。 片渕さんはライフコーチで、アメリカの教育機関が認定する発達障害のコーチング資格を取得しています。学習成果の振り返りはもちろん、私生活に関わる相談にも乗り、行動計画を考える手助けなどをします。 発達障害の人の中には、朝起きられず遅刻したり、衝動買いを抑えられなかったりするケースもあります。まず自身の特性と向き合うことが大切で、自らを理解したうえで生活習慣などを見直し、気持ちに余裕のある状況をつくっていくそうです。最終的には、自分で立てた目標を最後までやり遂げ、成功体験を積み重ねていくことを目指します。
自立できたと思ってもらえるまでサポートを続けたい――。そんな思いの片渕さんも、10年ほど前にADHD(注意欠如・多動性障害)と診断された当事者でもあります。 かつて、特産品のブランディングなどを行う地域商社に勤めていた片渕さん。新規事業を担当していましたが、多忙になるにつれ、書類の記入漏れが頻発し、仕事の優先順位が付けられなくなる状況に陥ったそうです。 仕事がたまる一方の悪循環で、周囲から「どうしてできないの?」という目が向けられました。自分でも理由が分からず、生活リズムも崩れていきました。「頭の中につけっぱなしのテレビが3台あり、常に騒がしい状態でした」と振り返ります。