憲法改正の現在地は?自民党・和田政宗参院議員に聞いた
まずは緊急事態対応から~現行憲法の改正が必要な本当の理由
機が熟している中ですが、改めて、なぜ憲法改正が必要なのかを確認しましょう。和田氏は、現行憲法に改正が必要な理由を、次のように説明します。 現行憲法で自衛隊を保持できるのか、多くの憲法学者が疑義を呈している現状がありますが、その一方、現実には自衛隊は、国防を目的に国を守ったり、災害派遣で活躍しています。 そういう状況の中、教科書で「違憲の疑いがある」などと言うと、現場で活躍している自衛隊員や家族がどう思うだろうか、と和田氏は疑問を投げかけます。 和田氏「我が国の国防上も、自衛隊というものを明記することがきわめて重要であって」 和田氏は、現行の憲法は、私たちの祖父母の時代が非常に強く戦ったことで、アメリカは日本に二度と軍事力を持たせない、アメリカが日本の防衛を担うという中で、GHQが作った憲法だと説明します。 当然、そういった憲法では国防に対する規定がありません。しかし、その後アメリカが朝鮮戦争に注力する中で、日本に防衛軍のようなものを作ってよい、という流れになり、結果として警察予備隊、保安隊、自衛隊ができていったという経緯になっています。 本来、この経緯に合わせて憲法で規定すべきところでしたが、 和田氏「第二次安倍政権まで、いわゆる改憲に必要な勢力(衆参それぞれで2/3)を取れませんでしたので」 和田氏は、国防以外に衆参両議員の災害時の任期延長についても言及します。 非常時に議員の任期が満了となってしまったらどうでしょう。現に、関東大震災の時は、3か月帝国議会が開催できなかったとの記録が残っています。 衆院が解散して選挙ができない時、参議院議員の緊急集会で決めることができるとはいえ、基本的に日本は二院制です。緊急集会で決めたことが、あとから衆院によってひっくり返ることがある、と和田氏は警告します。 選挙ができないうちに任期が切れてしまったら。また、任期切れとなったのが衆参同日選挙の結果だったりしたら。制度上では、参院の改選でない人数で議会運営を行うとしても、選挙ができないほどの非常事態下で、120~130人という少ない人数で議員としての活動ができるのか、と和田氏は表情を厳しくします。 加えて、現行憲法では緊急時に、私人の権利の制限ができない、ということを和田氏は指摘します。 私権制限とは?例えば東京都内で大震災が発生して、公共の避難場所が使えなくなった中、たまたま民営のホールが利用可能な状態だったことがわかります。即座に避難所として使用したいのに、現行法では、そういった建物に避難者を入れるよう、建物オーナーに強いることができないのです。 和田氏は、「普通の国はOECD加盟国、不文憲法であるイギリスや、いざというときの政府の権限が大きい構造のアメリカ合衆国憲法以外のほとんどは、緊急事態条項を規定している」と眉をひそめます。 海外の多くの国や地域では、「民間の施設に避難させる場合は、政府が強制的に借り上げて、避難者を収容する。滞在中に建物内の設備が傷んだらお金で保障するか、原状復帰で返す」となっているのに、日本ではこれができない、と和田氏はコメントします。 また、緊急事態対応のひとつとして、新型コロナ禍の初期の頃の事例も紹介しました。 武漢から日本人が帰国した際、経過観察で千葉県内のホテルに入所する中、数人が、経過観察を嫌って帰宅してしまったということがありました。 感染リスクがある中、緊急事態時に憲法で移動の制限ができるという構造になっていれば、そういう問題は防げた、と和田氏は解説します。