「痩せて可愛くなった」は呪いの言葉? 独身アラサーOLが摂食障害に…美醜のプレッシャーと恋愛依存がもたらした転落
■摂食障害と恋愛依存のWコンボ、年下ヒモ男に不倫…「脳も低栄養状態で正しい判断ができなくなる」
やがて年下の男性と出会った主人公は、彼に気に入られるためにさらにダイエットにのめり込んでいく。しかしその男性は“金の切れ目が縁の切れ目”をチラつかせるヒモ体質だった。過食嘔吐を繰り返していた彼女は、かさむ食費と貢ぎ代を捻出するために、上司とお金を介する不倫関係に陥っていく。ほのかな痩せ願望をきっかけに、どこまでも転げ落ちていくさまが恐ろしい。 「摂食障害の怖いところは、体だけでなく脳も低栄養状態になり、正しい判断ができなくなることです。精神的に不安定に陥り、些細な引き金が自殺に繋がってしまうこともあるようです。しかし誤解していただきたくないのは、過食嘔吐は本人の意志の弱さの問題ではないということ。むしろ意思が強い人ほど『しっかりしなければ』『美しくならなければ』と自分を追い込んでしまうとも考えられますし、その結果、脳の食欲を司る機能が侵されてしまうのが摂食障害という病気です。あらゆる依存症は『自己責任だ』と切り捨てる風潮もありますが、そうした誤解がいざ依存症になった時に『恥ずかしい』と隠したり、治療が遅れる原因にもなります。自己責任論を振り回す人ほど、実は危険だということも知っていただきたいです」 もしも周りに摂食障害が疑われる人がいたら、「見過ごさないであげてほしい」と駒井氏は語る。コミックでは自殺未遂を図った主人公を、ある女性が自助グループに繋げる展開だ。 「人生でつまずくことは誰しもありますが、見捨てず立ち直りを支援する社会であってほしい。自助グループやカウンセリングといったセーフティネットの存在ももっと広く、当たり前のものとして利用できる環境になってほしいですね」 SNSで“美しくなる努力”として整形やダイエットが称賛される風潮も、少し疑ったほうがいいかもしれない。心や体の健康を引き換えにする“努力”は、決して自分のためにはならないはずだ。 (文:児玉澄子)