計画の変更は必要ナシ? ステランティスは昨今のEV不振をどう見ているのか
気を吐いたのはアバルトと……
東京・港区を一望する高ーいビルに上るのも、これで3度目。なにやら定例化しつつあるステランティス ジャパンの事業説明会&意見交換会に、今回も参加させていただいた。 【写真】日本導入が待ち遠しい! アルファ・ロメオの新型SUV、ミラノ……あらためジュニアの詳しい姿はこちら!(40枚) お題は多岐にわたったのだが、特に興味深かったのが、「踊り場にきた」といわれる電気自動車(EV)の普及に関する、ステランティスの、あるいはステランティス ジャパン打越 晋社長の見解だった。……のだが、その前に日本における彼らの近況を振り返っておこう。 2024年第1四半期の販売台数は、ジープが2198台で前年比74.5%、プジョーが1510台で59.9%、フィアットが1059台で95.6%……と、ブランドによってムラはあるものの、全体的に芳しい結果ではなかった様子。新車導入や大幅改良といったトピックの谷間となってしまったため、ガマンの時期を過ごしたようだ。 そんななかで気を吐いたのが、ブランドでは前年比141.6%の416台を販売したアバルト。商品のジャンルでは、EVやプラグインハイブリッド車(PHEV)、マイルドハイブリッド車(MHEV)といった電動車だった。特に後者は、普段は5~6%だった販売に占めるシェアが、およそ10%に達したという。 実はステランティス ジャパンでは、2023年10月より電動車を買った人にコンシェルジュが提案した旅をプレゼントする「EVERYBODY EV」キャンペーンを実施。これが功を奏し、電動車に関しては「ほぼ計画どおり」の売り上げを実現できたとのことだ。ちなみに2024年4月からも、蔦屋家電のセレクトアイテムや車両の購入サポートを進呈する「GO! EV LIFE」キャンペーンを実施。“電動車推し”のマーケティングを続けている。
注目のニューモデルがめじろ押し
こうしたスタンスは新製品の導入計画でも同じだ。日本におけるステランティスの新車導入スケジュールを見ると、第3四半期からはEVを含む電動車の大量投入が計画されている。旧グループPSA由来のプラットフォーム「e-CMP2」に次世代電池を積んだモデル群で、「フィアット600e」や電動版「DS 3」、「ジープ・アベンジャー」、そして待望の「アルファ・ロメオ・ミラノ」……じゃなくて「ジュニア」と、話題の新顔がめじろ押しだ。物流などの問題による遅れの可能性はあるものの、これらの車種は基本的に2024年内の導入を予定。ステランティス ジャパンでは、長くとも2カ月に一度のスパンでニューモデルを日本に持ってくるとしている。 充電網の構築についても前のめりで、取扱商品にEVがあるディーラーについては充電器の設置を推進。アベンジャーの導入によりジープのお店にも充電器が据えられれば、所定の計画どおり、国内におけるすべての主要ディーラーに充電網がいきわたることとなる。日本における2024年度のCEV補助金を見ると、充電器の整備状況も勘案して支給額に差がつけられていた。もし次年度以降もこの基準が用いられるのなら、ステランティスの待遇は今より改善されるかもしれない。 余談だが、2024年度の補助金支給額は車種に応じて36万~55万円と、国産勢やドイツ勢、テスラなどと比べていささか差をつけられていた彼らだが、それでも販売に影響を受けたという話は現場からは届いておらず、「どうしてくれるんだ!」という悲鳴やクレームも上がってはいないという。広く浅く訴求する商品はないものの、特定の層にプスッと刺さるクルマをバラエティー豊かに取りそろえるステランティス。補助金の額が少なかろうと、「お宅のクルマが欲しいからお宅のクルマを買う」といった顧客が多いということなのだろう。この辺りにも、「取り扱いブランドは7つ!」という商品構成の幅の広さと、熱心なファンを持つことの強みが表れていると思う。