航空貨物、中国発EC急増でコロナ禍以上の運賃上昇も
日本発の航空貨物スペースに逼迫(ひっぱく)感が強まっている。中国発のEC(電子商取引)貨物の激増に伴い、特に5月後半から欧米向けスペースの手当てが難しい。この秋には、米国の港湾混雑の再燃も懸念されるが、日本発の船落ち需要に割り当てられるスペースは限られそうだ。一部のフォワーダーは、「航空運賃は新型コロナウイルス禍以上に上昇して、より深刻な物流の危機が発生する可能性もある」と警鐘を鳴らす。 需給の逼迫は、上海や香港発で激増するEC貨物によるものだ。航空貨物運送協会(JAFA)がまとめる日本発の輸出航空混載重量は今春から2年ぶりの回復に転じているものの、輸出需要はまだまだ底ばい状態。中国から欧米への直航便に積みきれないEC貨物が、経由貨物として日本発スペースを圧迫している。 グラフは直近1年の香港空港の貨物量と米シカゴ向け運賃の推移。貨物量は5月実績が40万トン台と、昨年のピークシーズンに迫る異例の水準だ。特に、香港からの積み込み量は今年1―5月が過去最高。ECが市場の景色を一変させている。 運賃情報サービスのTACインデックスによると、シカゴ向け運賃はコロナ禍の反動で昨年は急落したが、足元は6ドル台をうかがう高水準に戻してなお上昇気配を漂わせる。 直近はコンテナ不足などを背景に海上運賃が大きく上昇している。 この影響で日本発でも一部、航空シフトの動きが見られるが、「割合からいけば、かなり少ない」(フォワーダー)。コロナ禍を経て安全在庫を持つ荷主が増え、運賃が高止まりする航空輸送を積極的に利用する動きは少ない。 足元の日本発の航空需要は限定的だが、ひとたびコロナ禍のように海上輸送が大幅に遅滞すると、船落ち需要が殺到する。 しかし、既に日本発のスペースはECが占拠しており、コロナ禍のように旅客機を貨物便として任意の都市に飛ばすこともできない。日系フォワーダーからは、「既に欧米向けスペースの手当てに四苦八苦しており、運賃値上げをお願いする場合がある。ここにコロナ禍のような船落ち需要が押し寄せた場合、運賃がどこまで上がるか分からない」と懸念を示す。
日本海事新聞