土木が原風景となる時(1)次世代に伝えたい社会インフラ
私たちの生活と産業は、ダム、道路、鉄道、トンネル、空港、海洋施設、地下施設など多くの社会インフラ(Infrastructure)に支えられている。それぞれの施設には建造目的があり、公共財としてのミッションがあるが、一方では、単純にそのフォルムや構造美が話題になることが少なくない。これは、一品生産として大地に根を張る土木施設の重要な一面と考える。 2018年(平成30年)、折しも明治150年の節目を迎えるこの時期に、土木施設の精華を次世代へのメッセージとして伝えることが重要と考える。これら土木施設は、明治開闢以来の発展を下支えしてきたものであり、かつ次世代へ受け渡す資産でもあるからだ。 土木の金字塔として称えられた社会インフラは、地域に根差し、やがて地域の原風景となる。その多くは、“土木のレガシー Legacy of Infrastructure”として、100年、200年のスケールにて語り継がれることになる。 ここで、多くの土木事業者と土木愛好家を代表して、次の2点を強調したい。 (1)土木施設は、重厚かつ華麗である! 土木施設の多くは、線状的/平面的に広がる巨大構造物であり、そのフォルムは重厚で華麗な構造美を誇る。その一目に余りある容姿をしっかりと堪能することが大切である。 (2)土木施設は、高機能かつ複雑である! 道路/鉄道施設、空港/港湾施設、エネルギー供給施設などは、それぞれが目的とする機能を有し、複雑なシステムとなっていることが多い。そのシステムを視覚的に感じ取り、理解することが大切である。 例えば、古今東西、数多(あまた)ある映画を名場面集にて回想するように、社会インフラ(≒土木施設)の姿形・フォルムを、最も輝く形としてお伝えしたい。ダム、橋、トンネル、空港など全国各地にて供用されている土木施設から、「選りすぐりの名場面」を編集し、土木の世界へ誘(いざな)うものである。 題して、「土木が原風景となる時」。土木がもっと好きになる6つの物語を始めたい。
著者プロフィール 吉川弘道(よしかわひろみち)1975年早稲田大学理工学部卒。工学博士(東京大学)、技術士(建設部門)。米コロラド大学客員教授、東京都市大学教授を経て、現在、東京都市大学名誉教授。専門は、耐震設計、地震リスク。土木学会論文賞など多くの受賞歴がある。現在、インフラツーリズム推進会議議長を務めるほか、投稿サイト「土木ウォッチング」やFacebookページ「Discover Doboku」を主宰。著書は「鉄筋コンクリート構造物の耐震設計と地震リスク解析」(丸善)など7冊を上梓。