転換期を迎える琉球ゴールデンキングス、安永GMが語るチーム作りの哲学(前編)「選手の伸び代を大切にするのがキングスのやり方」
「選手が成長するスピードを少しでも早めることができる環境を作りたい」
昨シーズンの琉球ゴールデンキングスはあと1勝でリーグ連覇を逃したが、3年連続でファイナルに進出とリーグ屈指の常勝チームとなっている。だが、今オフは中心選手の1人だった今村佳太が契約解除によって移籍するなど、複数の主力がチームを去った。新たなサイクルに入った今、どんなコンセプトを重視してチームを編成したのか安永淳一GMに聞いた。 ――まずは、昨シーズンの振り返りをお願いします。 あと1勝でBリーグ連覇、天皇杯の初優勝、西地区7連覇をそれぞれ逃したところで「残念だったね、惜しかったね」という声を多くかけていただいています。同時に「よく頑張ったね」と言ってもらえることも多く、私も、とても悔しさはありますが、選手とコーチが本当によく頑張ってくれたと思います。例えば天皇杯の決勝で48点差と一方的に負けたり、レギュラーシーズンの最後、あと1勝で地区優勝のところで名古屋ダイヤモンドドルフィンズに連敗など、強烈にストレスがかかる負けがありました。チームの集中力が切れて暴走してもおかしくない苦しい経験を何度もする中で、チャンピオンシップでアルバルク東京、千葉ジェッツに第3戦までもつれる戦いを制して、3年連続ファイナル進出を果たしたのはチームの成長を誇らしく感じています。 昨シーズンは大黒柱のジャック・クーリーが8月末にケガをして、彼を欠く中でのシーズン開幕となりました。急遽アレックス・カークが来てくれましたが、キングスのバスケットスタイルは個人に依存せず、チームで戦うのでカーク選手が溶け込むには時間がかかりました。そしてシーズン中も故障者が出ながら、何度も逆境を乗り越えてくれました。結果として、1つのタイトルを取れなかったですが、苦しい状況をよく戦い抜いてくれました。 ――新シーズン、故障者などのアクシデントがない限りは現状11名のロスターで開幕を迎える予定です(取材7月10日)。どんな点を重視した編成となりましたか。 1人の支配力のある選手を連れてきて、その選手が凄いから勝てるというのはキングスのスタイルではないと考えています。キングスは今年18年目になりますが、それこそ15年前のリーグであれば1人の際立った選手がチームいることでプレーオフに出られる戦いができたと思います。でも今のBリーグはバスケットボールのレベルが急激に上がり、1人、2人のスーパースター選手がいることだけで勝てる程、甘くないです。 そして私たちが大切にするのは、やはりチームで戦う布陣を作ることです。そして元気のあるチームが「魅力あるチーム」になると考えます。岸本隆一選手(34歳)は年齢を感じさせないプレーをしてくれますが、やはり若い選手は元気があり、エネルギーに満ち溢れています。例えばケヴェ・アルマ選手を獲得したのはプロ3年目で経験が少ないにせよ、上積みがあるところも理由にあります。現時点で、完成したチームというより、シーズンを通して成長していくような伸び代があるチームを編成しました。 ここからどのようにチームを伸ばしていけるかは、スタッフとコーチの仕事で、そういった観点での補強や体制の強化に努めているところです。若手選手が成長するスピードを少しでも早めていける環境を作りたい。それができれば力強いシーズンの終わり方ができると信じています。今後もスタッフ、コーチ陣や環境作りをさらに進化させます。どんな選手を獲得するかも大切ですが、選手を支えて成長させることに力を入れることがさらに重要です。選手の伸び代を大切にするのが、キングスの流儀です。 ――新戦力のアルマ選手は、セブンティシクサーズの一員としてNBAサマーリーグで大活躍しています。元々、サマーリーグの出場は契約した時から分かっていたことでしたか。 NBAサマーリーグに出たい、出るかもしれないという話は加入前から聞いていました。キングスは世界を目指して沖縄から戦っていきたいという志を持っていますし、選手自身の挑戦したい気持ちに蓋をしてまでキングスに来て欲しい、と言うのは違うかなと思います。サマーリーグの参加オファーが、NBAチームから掛かったら行ってもいい、というのは交渉の段階で認めていました。もちろん、アルマ選手がケガをしてしまわないか、活躍することでNBAチームと契約をしてしまうのではないか、といった不安もあります。でも、選手・スタッフに限らず、世界に対して挑戦したい気持ちは尊重して、チャレンジしてもらいたい。
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