電流爆破マッチで弟テリーを追悼したドリー 再来日に意欲を示すファンクスの兄
【柴田惣一のプロレス現在過去未来】
5年ぶりに来日した「グレート・テキサン」ドリー・ファンク・ジュニアが日本のファンを魅了した。 【動画】<ハンセンvsブロディ>禁断の対決ついに実現!’87世界最強タッグ決定リーク戦 8・24「テリー・ファンク一周忌追悼・大仁田厚デビュー50周年記念」(神奈川・富士通スタジアム川崎)大会に参戦したドリー。試合の他、トークイベントにも臨み、全日本プロレスの記者会見に出席するなど大活躍。弟テリーの決め台詞「フォーエバー」を何度も口にし、世界マット界を席巻したファンクスの勇姿を思い起こさせた。 御年83とあって往年の動きとはさすがにいかなかったが、その気品のある佇まい、理詰めのファイトを披露。ファンクスの代名詞だったスピニング・トーホールドには惜しみない拍手が送られた。 最後の来日と言われていたが、本人も「また来ます。日本のファンの皆さんと会いたいです」とアピール。全日本プロレスの暮れの本場所「最強タッグ」に立会人として参戦する意欲満々だった。 1970年代から80年代、日本マット界でのファンクスの人気は凄まじかった。追っかけファンが殺到し、応援団がいくつも結成された。チアガールのような女子中高生のグループは熱狂的だった。 沈着冷静な兄ドリーにやんちゃな弟テリー。大方の女性ファンはテリーに歓声をあげていた。テリーとの記念写真を希望した女学生が、ドリーにカメラを渡してシャッターを押してもらうシーンを目撃。次は自分と身構えたドリーだが、満足した彼女は「サンキュー」というと笑顔で去ってしまった。「えっ」と少しばかり寂しそうだったドリーの横顔、困ったようなテリーの表情が忘れられない。 もちろんドリーの支持者もたくさんいた。通の男性ファンはドリーの玄人受けする緻密なファイトに心揺さぶられていた。 様々な名勝負を残しているドリーだが、歴代のNWA世界王者を代表するドリーとAWA世界王者史を飾るニック・ボックウインクルの攻防にはしびれたものだ。日米両国マットで何度か実現した「世界王者」対決は、まさに絶品。派手な大技は抑えめに、ねっちりとした腕や足の関節の取り合いでじっくり魅せてくれた。両者の心の動きまで伝わってくるようなしのぎあいは見事だった。 テリーには似合った電流爆破マッチに、ドリーは83歳にして初のチャレンジだったが、有刺鉄線爆破バットの衝撃にも動じなかった。 NWA世界王者として全米各地区や日本など世界中の猛者の挑戦を退けていたドリーにしてみれば、どんなスタイルもお手のもの。心配していたのは周囲の者だけで、ドリー本人はどっしりと構えていたのだろう。長年の実績、実力、肝の据わったその勇姿は不変だ。 今回の来日でも常にドリーのそばでサポートしているマーティー夫人とのおしどり夫婦ぶりも変わらない。前妻と離婚後、物心両面で困惑した時期に、親身になってフォローしてくれたのがマーティー夫人だった。「とても感謝しているし、大事な人」とドリーさんはニッコリ。 東京・六本木で食事をご一緒したときのこと。ドリーは「寿司? しゃぶしゃぶ? すき焼き? 天ぷらもいいな…」と迷っていたが、マーティー夫人の一言で「ハードロックカフェ」になった。マーティー夫人のご機嫌が良いと、ドリーも本当に嬉しそうだった。テリーもビッキー夫人とラブラブの愛妻家だった。 米マット界に憧れていた時代の昭和のプロレスファンのヒーロ―であり、世界マット史に刻まれるリビングレジェンド、ドリー・ファンク・ジュニアは、もはや人間国宝。「フォーエバー」いつまでもお元気で。(文中敬称略)
プロレスTODAY