【ミドシップ化は必然か?】 ブランドの流れからコルベットの歴史を俯瞰する
ミドシップへの正常進化、その背景
なぜフロントエンジンではキツいのかといえば、トラクションの偏りで4本のタイヤをうまく使えないからだ。リアエンドがスパッと切り落とされたコルベットのデザインではディフューザーを長くとれないし、リアウイングの効率も上げられない。 ポルシェ911のレースカーが、市販車のRRに対し、ミッドシップ化の超特例を勝ち取っているように、現代のGTレーシングの勘所はアンダーフロアの効率を最大化するディフューザー設計にある。 一方ロードカーにとっては年々厳しさを増す歩行者保護という問題があった。ボンネットの下にすぐに硬いエンジンがあると、事故で跳ねてしまった人の頭部に重大な損傷を与える恐れがある。その結果近年はボンネットを低くデザインすることが難しくなっている。 ボンネット基部にエアバッグを仕込み、衝突の瞬間に持ち上げるという手法も流行ったし、そもそも低いOHVエンジンを積むコルベットは有利だったが、それでもVバンク内にスーパーチャージャーを載せたりもしていたわけで、限界は迫っていた。 以上の流れから考えると、現行のコルベットの立ち位置は"意外"ではなく"順当"そのもの。時代が求める要件とヨーロッパ・スポーツカー的アプローチ、そして北米市場を鑑みたローカライズ……。また基本設計に1000馬力オーバーのZR1や電動化が含まれていたことは当然で、その点でも8代目のアプローチはミドシップ以外になかったのだ。 Corvett 2024~「よーやく新しくなったか!」、そんなコルベット生みの親の声が聞こえてきそうなのが、颯爽とした現行型なのである。
吉田拓生(執筆) 神村聖(撮影) 平井大介(編集)