「プレーヤー・オブ・ザ・ディケード」大谷翔平…呼び声が高まる20年代最優秀選手
今年も残すところわずかとなり、ドジャース大谷翔平投手(30)にとって素晴らしい1年が終わろうとしています。同時に、メジャーリーグは2020年代前半が終わります。メジャーには週間MVP、月間MVP、年間のMVPがあり、さらにディケードという10年間で最も優秀な選手に贈られる「プレーヤー・オブ・ザ・ディケード」もあります。 これは1886年創刊の米老舗スポーツメディア「ザ・スポーティング・ニューズ」社選出によるもので、各10年で最も優秀な選手、いわゆるMVPを選んでいます。 古くは1950年代のスタン・ミュージアルです。プロ入り当初は投手で、後に打者転向とベーブ・ルースに相通ずるものがあります。カージナルス一筋22年間で通算3630安打。ナ・リーグで7度も首位打者を獲得しました。また人格、識見ともに優れたところから「ザ・マン」と呼ばれました。 60年代は史上最高の万能外野手と言われたウィリー・メイズ、70年代は歴代1位の通算4256安打を放ったピート・ローズ、80年代は「史上最高の三塁手」との呼び声高いマイク・シュミット。ちなみに、今年はメイズ、ローズともに亡くなりました。 今世紀に入り、2010年代は「アスリート・オブ・ザ・ディケード」と名称が変わり、主なスポーツ競技から1人ずつ10年間の最優秀選手を選出しています。NFLからトム・ブレイディ、NBAからレブロン・ジェームズ、NHLからシドニー・クロスビーと、各界を代表するスーパースターが選ばれました。 MLBからはマイク・トラウト(エンゼルス)が選出されました。12年ア・リーグ新人王に輝き、14、16、19年と3度もMVPを受賞。それ以外の年も毎年のようにMVP投票上位に入り「現役最高の選手」と呼ばれました。大谷との最強コンビ「トラウタニ」でも大きな話題になりました。 20年代に入り、今年でちょうど半分が経過しました。早くも20年代最優秀選手は、大谷の呼び声が高まっています。これまで5年間の成績を見ても、投手は2度のトミー・ジョン手術により、通算76試合の先発登板と少ないものの、34勝17敗、防御率2.97。奪三振率11.41と、素晴らしい成績を残しています。 一方、打撃ではアーロン・ジャッジ(ヤンキース)の205本塁打に次ぐ2位の185本塁打、マット・オルソン(ブレーブス)の493打点などに次ぐ6位の444打点、ロナルド・アクーニャ(ブレーブス)の143盗塁などに次ぐ3位の123盗塁、ジャッジの長打率6割3分5厘に次ぐ2位の5割8分7厘を残しています。 それによって、選手の総合能力を示す指標WAR(最低年俸レベルの選手を起用した場合と比べ、チームにもたらす仮想勝利数=ファングラフス版)で投手として10.8、また打者として24.2をマーク。投打で合計すると35.0になり、投手部門1位ザック・ウィーラー(フィリーズ)の24.7、野手部門1位ジャッジの33.4を上回る数値となっています。 さらに最初の5年間で早くも3度目のMVPに輝き、AP通信の「今年の男性アスリート」も元NBAのスーパースター、マイケル・ジョーダンと並ぶ2位タイの2年連続3度目の受賞。それだけでも十分な価値があります。 もはや、現在のライバルはジャッジぐらいであり、「20年代のMVP」へまっしぐらです。 【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)