JALの相次ぐトラブル、背景にOJTやコミュニケーション不足も
(ブルームバーグ): 日本航空(JAL)はこのほど、相次ぐトラブルを受けて再発防止策を国土交通省に提出した。一連のトラブルの背景に、職場内訓練(OJT)の不足やコミュニケーションがうまく取れていない部分があるのではないかと、航空業界の関係者は警鐘を鳴らす。
新型コロナウイルスの感染拡大下で、航空業界の回復がすぐには見込めないと考えた30-50歳の地上職がJALを去り、ベテランと若手のつながりが断ち切られてしまったと、関係者は話す。新入社員への指導役を担っていた中堅の人材が減ったこともあり、若手が年上の社員に質問しづらくなっているという。この関係者は公の場で話す権限がないとして、身元を明かさないよう求めた。
同様の動きはJALのコックピットでも起きている。多くの場合パイロット同士は初対面だといい、年功序列の文化が根強く残る日本では、懸念を伝えることが難しくなっているという。
JALの広報担当者はコメントを控えた。
1月2日に発生したJAL機と海上保安庁機の衝突で、航空業界の安全に関心が集まる中、JALは相次ぎトラブルを起こしている。5月には福岡空港で滑走路手前の停止線をオーバーし、別の航空機が離陸を中断する事象が発生。同じ月に羽田空港の駐機場で、同社機同士で主翼の先端が接触する問題が起きた。一連の事案を受けて、5月末には国交省から厳重注意を受けた。
22日午後には、青森空港を出発して伊丹空港に向かっていた機体がエンジン関連の異常で青森空港に緊急着陸するトラブルがあった。
こうしたトラブルは、日本の航空産業が世界の多くの地域と同様、新型コロナ禍の収束に伴う観光需要の復活を享受する最中に起きた。日本は円安の影響もあり、訪日客は3月から3カ月連続で300万人を超えた。ただこのままトラブルが相次げば、観光市場回復の冷や水にもなり得る。
JALが18日に開いた定時株主総会で、安全推進本部長を務める立花宗和常務執行役員は、交通量の増加や空港での運用が複雑になる中、「社員が安全活動に専念できる環境の改善に十分な対策が講じられなかった」と述べた。