“またトラ”で中東どうなる? ~ハマス幹部が私たちに語ったこと【ロンドン子連れ支局長つれづれ日記】
ジューダさんの生活は戦闘が始まって、一変。去年10月13日、イスラエル軍の空爆が自宅の隣の家を直撃した。ジューダさんの父親が頭にけがをし、ジューダさん自身も足を負傷した。3日後、ジューダさん一家はヌセイラトの難民キャンプへ身を寄せた。 今年4月、避難先のラファの難民キャンプで次男のジェッド君が生まれた。このわずか5日後、イスラエル軍がラファへの攻撃を始める。 ジェッド君が生まれて7日目、ジューダさん一家は再びラファを後にし、ヌセイラトの難民キャンプへ。一家はこの1年あまりの間にキャンプからキャンプへと移動を繰り返してきた。そして今月10日、ジューダさんは知人から、自宅が完全に破壊されたと聞かされた。 国連によればガザ地区に残されたガレキは4200万トン。東日本大震災で岩手、宮城、福島の3県で発生したがれきの、およそ2倍にあたる。
「パンをもらうために並んでいた13歳の女の子が、目の前で息ができなくなって亡くなってしまいました」 ジューダさんは、飢餓に苦しんでいるガザ北部では、こうした悲劇が頻繁に起こると話す。 「トランプ氏にとって戦争を終わらせることは殺戮を止めることにすぎませんが、ガザ地区の私たちにとっては、その後にまだ多くの“戦争”を生きることになるんです。食料、仕事、住まい、教育、健康…」 「私たちは、子どもたちを学校に戻し、人々を家に戻し、生活を取り戻したいと思っています。それこそが平和をもたらすのです。しかし、路上で眠る人々の姿はさらなる暴力や過激主義を招き、さらなる危機を生み出すでしょう」 「トランプ氏は本当に紛争を終わらせ、大量虐殺を止めたいと思っているのでしょうか? その気になれば、紛争を止めることができるはずです。しかし、もしトランプ氏がそれを望まないなら、紛争や移住など、私たちパレスチナ人にとっての困難が続くでしょう」 ガザ地区の保健当局によれば、この1年あまりの間におよそ4万4000人が亡くなった。その多くが女性や子どもたちだ。餓死者も出ており冬が目前に迫る中、人道危機はいっそう深まっている。報復の連鎖を断ち切り、一刻も早く停戦を実現することが必要だ。 ◇◇◇
■筆者プロフィール
鈴木あづさ NNNロンドン支局長。警視庁や皇室などを取材し、社会部デスクを経て中国特派員、国際部デスク。ドキュメンタリー番組のディレクター・プロデューサー、系列の新聞社で編集委員をつとめ、経済部デスク、報道番組「深層NEWS」の金曜キャスターを経て現職。「水野梓」のペンネームで作家としても活動中。最新作は「金融破綻列島」。