実は絶妙に変化していた…!?出演映画のルックスでたどるジェイソン・ステイサム
「ワイルド・スピード」シリーズなどに出演してきたジェイソン・ステイサムの主演最新作『ビーキーパー』(公開中)。静かに養蜂を営むビーキーパー(養蜂家)が恩人の復讐のため立ち上がる本作は、たぎる闘志を胸に秘め戦う男を演じてきたステイサムの“ならでは”が詰まったハードアクションである。ステイサムと聞いてまず思い浮かぶのは、刈り込んだ頭に無精髭のあの面構え。しかしそのルックスは、作品によって微妙な変化を見せてきた。そこで歴代のルックスを振り返ってみたい。 【写真を見る】ジェイソン・ステイサムがロン毛に長髭でもはや別人!?『リボルバー』 ■ステイサムのパブリックイメージを決定づけた『トランスポーター』(02) ハイテク仕様のBMW735iを駆り、どんなヤバいブツでも運ぶプロの運び屋=トランスポーターの活躍を描く大ヒットシリーズ第1弾。南フランスの保養地ニースを拠点に活動するフランクは、美女が入れられた依頼品のバッグを開けたことから組織にねらわれてしまう。無口でダンディなプロフェッショナルという、ステイサムのパブリックイメージを決定づけた代表作。刈り込んだバズカットにうっすらと髭を生やしたワイルドなルックスも、これ以降定番になった。製作&脚本はリュック・ベッソン、監督を『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』(23)のルイ・レテリエが務めた。 ■若造感もたっぷりな『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』(98) モデルとして活躍していたステイサムの映画デビュー作。ロンドンの下町のチンピラ4人組が、イカサマ博打でマフィアから作った借金を返済するため、大麻の売人から金を盗み取ろうとする。監督はステイサムの盟友ガイ・リッチーでこれが第1回長編監督作。トリッキーなカメラワークと構成が楽しい、ハードな群像劇に仕立てている。ステイサムは主人公の仲間の一人ベーコンを演じており、きれいに髭を剃り上げ若造感もたっぷり。続くリッチーとのコンビ作で初の主演作『スナッチ』(00)ではアクションなし、スーツを着込んで闇ボクシングのプロモーターを渋く演じた。 ■少しだけ髪が長いベリーショート風の『ザ・ワン』(01) マルチバースをテーマにしたジェット・リー主演のSFアクション。125の平行世界すべての“もうひとりの自分”を殺し全能の力を手に入れようとする男に、最後の1人となった自分が戦いを挑む。ステイサムの役は、主人公を追うなかでバディとなる多次元宇宙捜査局(MVA)の新米捜査官ファンチ。のちに『ローグ アサシン』(07)や「エクスペンダブルズ」シリーズで共演するリーとの格闘戦も楽しめる。本作や火星の保安官を演じた『ゴースト・オブ・マーズ』(01)、金と女に目がないプレイボーイの盗賊を演じた『ミニミニ大作戦』(03)あたりは少しだけ髪が長いベリーショート風が多い。 ■ロン毛に長髭でまるで別人な『リボルバー』(05) 罠にかけられ投獄された男の復讐を描いたガイ・リッチーのクライムスリラー。凄腕ギャンブラーのジェイクは刑務所の両隣にいた詐欺の達人とチェスの天才から学んだ教えを生かし、出所後に自分をはめたカジノ王を陥れようとする。次々に想定外な事態が巻き起こる、先読み不可、謎が謎を呼ぶミステリアスな物語だ。復讐ものといってもジェイクは心理戦を仕掛ける頭脳担当のため、銃撃戦などアクションはほかのキャラたちが賄った。達観したジェイクを演じたステイサムは、ロン毛に長髭という仙人風の不思議なヘアメイクで登場。アップはともかく引き画では意外に様になっていた。 ■濃いめの髭が存在感を主張している『PARKER パーカー』(13) ドナルド・E・ウェストレイクの人気シリーズを映画化。孤高の犯罪者パーカーは初めて組んだ4人組との強盗に成功するが、裏切られ重傷を負わされる。怒りに燃えるパーカーは、病院を抜けだし報復を開始する。これまでリー・マーヴィンやメル・ギブソンら硬派なスターが演じてきた悪党パーカーを、ステイサムがオレ流で熱演。バイオレンスなアクションをたっぷりと見せつける。冒頭のカトリック司祭は白髪のウィッグで、後半にはカウボーイハットの成金と、変装姿もお楽しみ。2000年代後半よりステイサムは髪の薄さと対照的に髭は濃いめの傾向で、本作も髭が存在感を主張している。 ■落ち武者風のロン毛姿も披露する『ハミングバード』(13) 元軍人の復讐を描く社会派サスペンス。アフガニスタンの戦場で心を病みロンドンでホームレスをしていた元特殊部隊のジョゼフは、心を通わせていた少女の行方を追って裏社会に潜入する。ステイサム十八番の復讐ものでバイオレンス要素も強めだが、爽快系アクションではなくテイストはヘビー&ダーク。監督を『イースタン・プロミス』(07)や『蜘蛛の巣を払う女』(18)の脚本家スティーヴン・ナイトが務めている。ホームレスからコック、タキシードなど多彩なファッションを披露するが、冒頭では落ち武者風のロン毛でステイサムとは思えない落ちぶれぶりを見せている。 ■ほぼスキンヘッド&さらに濃いめの無精髭で迫力アップな『ビーキーパー』(公開中) 復讐のため巨大権力に挑む男を描いた最新作。養蜂家として静かに暮らすクレイは、かつて社会の均衡を保つため暗躍していた“ビーキーパー”と呼ばれるすご腕の工作員だった。フィッシング詐欺に遭い自ら命を絶った恩人の復讐を果たすため、クレイは詐欺組織に宣戦布告。捜査を始めたFBIやCIAらとも壮絶な死闘を繰り広げる。本作では、たった一人で並み居る敵をなぎ倒す復讐の鬼を熱演。組織を潰すため、涼しい顔でビル一つぶっ壊す暴走ぶりは圧巻だ。「MEG ザ・モンスター」シリーズや『エクスペンダブルズ ニューブラッド』(23)など近年は5厘刈りレベルで刈り込んでいるステイサムだが、本作ではほぼスキンヘッド&濃いめの無精髭で迫力アップ。チェックのシャツにキャップという普段着姿と、情け無用の戦いぶりとのギャップも本作ならではだ。 1998年に俳優デビューしてから四半世紀を超えるキャリアを通し、肉体派スターとして第一線を駆け抜けてきたジェイソン・ステイサム。ルックスを含めどこまで進化を続けるか、これからも楽しみにしていきたい。 文/神武団四郎