「決勝に行くぞ」石川祐希はなぜ“ギアを上げた”? 心配になるほど吠えた主将が植え付けたかった頂点のイメージ〈男子バレー五輪メダルの序章〉
何度も口にした「イメージ」の意味
今年5月の記者会見で、石川は何度も“イメージ”という言葉を口にしていた。 「なんでも初めての経験って、そんなにうまく行くものじゃないなと学んできているし、逆に1回経験していれば、どうにかなる。イメージが少しでもできていれば、近づけるという感覚があるんです。 昨年のVNLでメダルを獲る戦いをして、実際に獲ったので、そこのイメージはできている。そこは東京五輪と全然違うところ。パリ五輪では、メダルは『何がなんでも絶対に』と思っています。ただメダルの色を聞かれると、“これ”というのは……。もちろん金は目指していきますけど、まだ正直イメージがない。僕たちは決勝に行ったことがないので。 だからパリ五輪前に、VNLでその景色を見るということが一つの目標になっています。決勝に行くこと。そこを目指していけば、パリ五輪を迎えた時に、『メダルを獲る』プラス『色はこれです』と。(今も)金を目指しているんですけど、プラス、そこにイメージがついてくるので、より明確になって、今よりも強い気持ちで目標を発言できると思います」 穏やかに、笑顔も交えて話していたが、その言葉の本気度を、ファイナルラウンドでの石川の姿が証明していた。準々決勝で、予選ラウンドで敗れていたカナダを3-0でくだし、準決勝ではスロベニアに3-0で勝利。まさに有言実行で、決勝の舞台にたどり着いた。 決勝戦は東京五輪金メダルチーム・フランスに1-3で敗れて銀メダルだったが、“決勝”という今の日本代表にとって未知だった景色を目に焼き付けた。 テレビインタビューで石川は「相手のフェイントを点にさせてしまったり、そういう1点の差でメダルの色が一個変わってしまう。1点の重みを、決勝に来て改めて感じた」。 そう課題を挙げつつ、「今回銀メダルで終わったので、次こそ金メダルを。パリ五輪ではそこを目指せるチームだと思っているので、金メダルを目指して戦いたい」とハッキリと宣言した。 決勝で得た明確なイメージと課題、そして悔しさを持って、パリへ。 試合後のコートで石川は、選手、スタッフ1人1人と抱き合い、ねぎらいあった。怪我のためリザーブに回っていた高橋藍を含めたこの15人で戦うのは、この試合が最後。 パリ五輪の内定選手12人から外れたリベロの小川智大(ジェイテクトSTINGS)は、ファイナルラウンドでの出場機会はなかったが、ベンチに下がった選手を真っ先に笑顔で迎えたり、同じポジションの山本智大(大阪ブルテオン)にアドバイスを送り、タイム明けには手をたたいて鼓舞しながらメンバーを送り出した。 VNL前、石川はこうも語っていた。 「練習の質や、チームの仲のよさ、意識の高さ、それにスタッフが自分を犠牲にしてチームに与えてくれている影響だったり、そういうものを含めて“メダルを獲るべき”チームだというふうに僕は思っています。メダル獲得は何がなんでも絶対に、という思いでみんな集まっているので、本当にあとは結果を出すだけ。ここまで作ってきた自分たちのため、スタッフのため、この日本バレーのために戦いたいなと思います」 チームへの愛と五輪への覚悟があふれ出ていた。 そして今はそこに“パリに届かなかったメンバーのためにも”という思いが、新たに加わっているに違いない。
(「バレーボールPRESS」米虫紀子 = 文)
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