【漫画家に聞く】悪質すぎた「子供向け映画上映会」のアルバイト、その内容はーー完全実話のSNS漫画が気の毒
作者の特異な経験をわかりやすく追体験できるエッセイ漫画。Xに7月下旬に投稿された『20代の時経験したロクでもないバイトの話』は、謎のイベントでアルバイトをした体験が綴られており、関わりを持った人々が気の毒になってしまう作品だ。クレームに対して「心からは謝らない!」という運営者の悪質さがうかがえる。 ノンフィクション漫画『20代の時経験したロクでもないバイトの話』 本作を手掛けたのは、40代で雑誌の漫画賞の佳作を受賞したことをキッカケに、真剣に漫画制作に取り組むようになったという遠藤平介さん(@heisukeend)。完全ノンフィクションだという本作について、話を聞いた。(望月悠木) ■完全にノンフィクション ――今回『20代の時経験したロクでもないバイトの話』を制作した経緯は? 遠藤:本作に出てくる「心からは謝らない」という言葉が私の中である意味名言過ぎて、「これはちょっと人に話してみたい」と思って漫画にしました。また、某アニメの人気が生んだ悲劇であり、あまり体験できるものではなかったことも制作意欲を駆り立てました。とはいえ、この悲劇が起きた時期は90年代で、SNSもまだない時代でした。今なら炎上しますね。 ――『心からは謝らない!』ことです!」は本当に言われた言葉なのですね。 遠藤:はい。ちなみに、この名言と一緒に「そういう心理でやればなんとかなります」って感じで謝り方を伝授されました。今思えば「数々の修羅場を通したから出てきた言葉かな」と考えています。 ――改めてになりますが、本作は完全な実話ということでいいですか? 遠藤:完全にノンフィクションです。私の心理描写については当時との認識の違いからちょっと変えているところもありますが、この実写映画とかオチの動物アニメの部分まで全部ノンフィクションです。 ――登場人物のキャラデザも当時を再現したのですか? 遠藤:30年近くも前の出来事ですので、登場人物のビジュアルはもう覚えておらず、この辺りは適当です。ビジュアルを正確に思い出さなくても物語はつながるため、こだわりは特にはありません。ただ、これはエッセイなので、普通のお兄さんや女の子になるように意識しました。 ――実際にこのアルバイトを経験した後、大学の就職課にクレームは入れましたか? 遠藤:しませんでした。そうすれば良かったのかもしれないですが、クレームを入れた経験がなく、当時は思い浮かびませんでした。 ――他にも経験したロクでもないバイトはありますか? 遠藤:高校の前で生理用品のサンプルを女子高生に配るバイトに行ったのですが、高校の前で幾ら待ってても高校生が一人も通らず、責任者の男性が聞き込み調査に行き、帰ってきて一言「すみません、ここ、全寮制の男子校です!」って言った時は一周回って面白かったです(後で全員その責任者から詫びミスドをもらいました)。 ――また、本作のクセになる緩い雰囲気はどのように作り出しているのですか? 遠藤:こういう緩さは人間の性格と同じようにいつの間にか形成された私の“スタイル”だと思いますので、雰囲気作りはあまりこだわった部分は無い気がします。もともとの性格が緩いから表現できているのかもしれません。 ――最後に今後の漫画制作における目標など教えてください。 遠藤:今は『シカタニ氏のお仕事』というストーカーものの長編漫画を描いていて、「死ぬまでに完成したらいい」と思っています。描き始めてから7年経っても終わりが見えてないのですが…。「7年かけてまだ終わりが見えない作品を描いていて、「飽きないのか?」と言われそうですが、自分の中ではストーリーの最後まで出来上がっているので完走したいです。また、その間に四コマとか短編とか描いていきたいです。
望月悠木