歳をとることは不幸か、幸福か?ありのままに生きる…高齢化とは幸せなこと
高齢者の幸せとは
結果を表3にまとめてみました。こうして老年的超越の8つの因子を見てみると、幸せの4つの因子を網羅していることがわかります。特に、ありのままに因子に関連するものが多いですね。確かに、高齢者の幸せとは、金、モノ、地位などの地位財にとらわれずに、ありのままに生きる姿なのかもしれません。 なお、増井らの研究によると、 2 内向性 3 二元論からの脱却 4 宗教的もしくはスピリチュアルな態度 は年齢と相関が認められなかったのに対し、 1 「ありがたさ」・「おかげ」の認識 5 社会的自己からの脱却 6 基本的で生得的な肯定感 7 利他性 8 無為自然 は年齢が上がるほど高まったことが確認されています。まさに、老年的超越。もう少し進めば悟りの境地であるように見えます。 このデータを見ていると、高齢者になるのが楽しみになってきますね。 実際、私は、100寿研究という、90歳や100歳の方を対象とした疫学研究を行っておられる医学部の先生から老年的超越についてお聞きしている時に、90歳を超える方がいかに幸せかを聞いているうちに、「はやく90歳になりたいなー」と思ったものです。 これから高齢者大国となる日本。高齢化とは、実は幸せな人が増えることなのです。医療・福祉上のインフラ整備など、高齢化に備えることは重要ですが、必要以上に心配するよりも、これからの日本は幸せ大国に向かうのだと楽しみにしようではありませんか。 【参考図書】 ・富澤公子,老年的超越―歳を重ねる幸福感の世界―,晃洋書房,2017年 ・広瀬信義,人生は80歳から 年をとるほど幸福になれる「老年的超越」の世界,毎日新聞出版,2015年 ・増井ら,日本版老年的超越質問紙改訂版の 妥当性および信頼性の検討,老年社会科学,Vol. 35, No. 1, 2013年 ※次回は6月15日ごろ掲載予定です。