メルセデス、カナダGPがシーズンの分岐点となるか。新規アップデートが失敗したら今季は諦めるべき?
今季は決勝レースで未だ表彰台に登っていないなど、苦しいレースが続くメルセデス。チーム代表であるトト・ウルフのレース後の分析コメントはあまりにも聞き慣れたものになり始めており、毎回悔しさと落胆を見せて反省の弁を述べるのがパターン化している。 【動画】F1マシン vs MotoGPマシン vs ラリーマシン!?レッドブルが究極対決実施 最近ではマシンにアップデートを施したものの、レッドブルやフェラーリ、そしてメルセデス製パワーユニットのカスタマーチームであるマクラーレンにも差をつけられてしまっている。上記3チームが今季既に勝利を収めている一方で、メルセデスは2022年のサンパウロでジョージ・ラッセルが勝利して以来、500日以上勝ちに恵まれていない。 2019年のカナダGPで、当時圧倒的な強さを見せていたメルセデスのルイス・ハミルトンが同GPでの自身7勝目を記録した時には、メルセデスの未勝利がこれほど続くとは誰も想像していなかったはずだ。 今週末には第9戦カナダGPが行なわれるが、適切な精査がされていない、単純作業の繰り返しになっている感のあるウルフの振り返りコメントも、ついに終わりの時が来たのではないかと感じる。 というのも、ウルフはイモラで「メルセデスは過去の失敗から学んだ」と自信たっぷりに語っていたのだ。メルセデスはこれまで、デザインのコンセプトが行ったり来たりしていたことで、ライバルのような上昇気流に乗ることができていなかった。しかしカナダGPに向けて用意されたアップデートでは、高速コーナーと低速コーナーのマシンバランスを改善することができると確信しているのだ。 彼らは、一度に全てを解決するようなもの、あるいはウルフが「奇跡のアップデート」と呼ぶようなものを追い求めるよりも、着実な進歩に焦点を当てるようになった。その成果が出るのかという点でも、モントリオールでのレースは注目に値する。 実はハミルトンもウルフと同じく、アップデートに対して楽観的な見方を示していた。ハミルトンはイモラでのレース前、チームが提唱したアップデート版パッケージをシミュレータでテストしていた。 モナコではハミルトンが、同レースを5位でフィニッシュしたラッセルにだけ新型のフロントウイングが装着されていることを強調し、チーム間での扱いの差に不満があることをほのめかして話題となったが、モンテカルロでのパフォーマンスは改善されたかと尋ねられたハミルトンはこう語っていた。 「僕のチームという点で言えば、イエスだ」 「今週末はなぜか僕たちが(ライバルと)と近くなった。これは喜ばしいことだ」 復活を予感させながらも失敗に終わった“偽りの夜明け”を何度も経て、メルセデスはカナダで新たなアップデートを実施する。このレースが彼らの今シーズンを決定付けるものになるという感触がある。 もしこのアップデートがうまくいけば、チーム代表であるウルフや、多くの批判を受けてきたデザインチームのプレッシャーも軽減されるだろう。逆にうまく行かなかった場合、もしかするとメルセデスは2025年の復活に向けて2024年の“ラウンド”はタオルを投げて諦めるべきなのかもしれない。
Ben Hunt