日本の競争力がヤバい水準まで低下、企業のビジネスを棄損する「昭和な謎ルール」の元凶とは
では、なぜ日本はこんなにもビジネスの効率が悪いのか。いろいろな考え方があるだろうが、筆者は日本でこれまで常識とされてきた「ルールで縛る」という昭和のマネジメントの弊害だと考えている。 よく言われることだが、日本人は異常なほどルールに厳しい。 転職・求人情報サイトを運営するヒューマングローバルタレント株式会社と、海外ITエンジニア派遣を展開するヒューマンリソシア株式会社が、株式会社エイムソウルと共同で48カ国、1407名を対象に行った「職場における仕事観・倫理観に関する国際比較調査」というものがある。 これによれば、アメリカ、フィリピン、インドネシア、ミャンマー、韓国、中国と比べて、日本は最も「規範」が強いことがわかった。「ルールの不遵守」や「誤字脱字の数」「早期離職」などが他の6カ国と比べて最も許容できないという結果になった。 ● 「これって意味あんの?」 謎ルールで縛る日本企業 「素晴らしいじゃないか!このような規律正しさが日本企業の強さにつながっているのだ!」と思う方も多いことだろう。実際、日本企業はこういう日本人労働者の気質を組織マネジメントにフル活用をしてきた。 部署内や現場で仕事を円滑に進めるための暗黙のルールをつくり、トラブルが起きれば社内ルールをつくり、会社が大きくなって新入りが増えれば仲間意識を高めるようなルールをつくり……というように「ルールで縛る」ことで、組織のガバナンスを強化して、チームの結束力も高めていったのだ。 ただ、物事には何でも良い面と悪い面がある。ルールで縛って人を動かしていくうちに、「なぜこのルールが必要か」と考えることなく、「ルールで縛る」ということが目的化してしまう。その成れの果てが、「これって意味あんの?」と首を傾げるような「職場の謎ルール」があふれかえる今の状況だ。
「朝礼では毎回、会長がつくった謎のフィロソフィーを独唱させられる」「女性は職場でメガネ禁止」「上司より先に退社してはいけない」「忘年会・新年会の幹事と隠し芸は若手の登竜門」などなど、みなさんの会社や業界にも、謎ルールや時代錯誤な慣習が一つや二つはあるはずだ。 実はこの「職場の謎ルール」が増えたのは、「異常なほどルールに厳しい」という日本人の気質のせいでもある。ルールをしっかり守る人は「ルール」と聞くと思考停止状態でそれに従い、否定することができないからだ。 そういう同調圧力がある組織は、新入社員が入るとわかる。もし新人が「あの朝礼で叫んでいるの、仕事になんか意味あんですか?」とか「上司がいても、仕事が終わったらさっさと帰った方が疲れも取れてパフォーマンス上がるんじゃないですか?」と職場の謎ルールにダメ出しをしたらどうだろう。 ● 世界トップレベルで 「ルール破り」を許せない文化 「なるほど、いいこと言うね」と謎ルールが撤廃される企業もあるかもしれないが、ほとんどの会社はこの新人に「社会人失格」「協調性ゼロ」「面倒くさいヤツ」といった烙印を押してしまうのではないか。 先ほどの「職場における仕事観・倫理観に関する国際比較調査」でも明らかになったように、日本人は世界トップレベルで「ルール違反」を許容できない民族だ。だから、どんな理不尽な謎ルールであっても、それを守らない者は許せない。どんなに有能であろうとも、どんなにビジネスの効率性向上に貢献しようとも、組織には「不要」と判断されるのが日本企業なのだ。 このカルチャーを象徴するのが、日本のサラリーマンを揶揄する「社畜」という言葉だ。日本のビジネスシーンは、どんな理不尽でも、どんな不合理でも「組織のルールに大人しく従う者」こそが「正義」なのだ。 こんなコチコチに硬直した「ルールに縛られた組織」に「ビジネスの効率性」があるわけがない。「企業の機敏性」が67カ国中最下位となってしまうのは、実は日本企業の多くが「自分たちでつくったルールで自縄自縛になっている」という感じで、自由を奪われていることが大きいのだ。