センバツ2022 1回戦 敦賀気比に拍手温か 2度目制覇の夢消え /福井
第94回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)で敦賀気比は大会第2日の20日、1回戦で広陵(広島)と対戦した。試合は初回に2点を先制されると、中盤以降にも追加点を奪われ、広陵に主導権を握られた。打線は四回に得点圏に走者を進めるも後が続かず、聖地で校歌を響かすことはできなかった。2度目のセンバツ制覇の夢はお預けになったが、アルプススタンドに集まった約400人の関係者らからは盛んな拍手が送られた。【大原翔、玉城達郎、橋本陵汰、隈元悠太】 試合前に「入りが大事」と話していた主将で主戦の上加世田。だが一回裏、警戒していた相手の左打者につかまり、2失点。出はなをくじかれた。スタンドで観戦していた父博幸さん(51)は「小さい時から左打者に打たれやすい傾向があった。だがまだ序盤。これからは頑張ってくれるはずだ」と話した。その言葉通り、上加世田は気持ちを切り替え、その後、序盤は失点を防いだ。 主将の奮闘に守備陣も応え、三回裏二死満塁の場面では、相手打者の飛球を前進守備だった中堅手の河合が背走しながら捕球し、ピンチをしのぐ。息子の好プレーに母仁子さん(43)は「絶対捕れ!と思っていたのでホッとした。打撃でも点につながる仕事をしてくれれば」と笑顔を見せた。 その直後の四回表、「初回で出塁できず、次は打ってつなげようと思った」という先頭打者の濵野がライト線に運び、チームとしても初の安打を放った。父克守さん(49)も「初回悔しかっただろうから、打てて良かった」と喜んだ。 反撃開始が期待されたが、その後は打線が続かなかった。好機を逸し、さらに五回に4失点すると、相手の勢いに押され終盤にかけてさらに3失点し、ゲームセットとなった。それでも、観客らは夏での復活に期待し、温かい拍手で選手らの戦いをたたえた。 ◇やっと憧れの地で応援 ダンスチア、吹奏楽部そろい ○…アルプススタンドには昨年のセンバツ出場時に新型コロナウイルス感染拡大の影響で駆けつけられなかったダンスチア部、吹奏楽部の部員らがそろい、選手らに熱い応援を届けた。両部とも、甲子園での応援に憧れて入部した部員が少なくない。自身もその一人という吹奏楽部の部長、立花日南(ひな)さんは「クラスメートでもある上加世田くんは劣勢の場面でも諦めず堂々とプレーしていた」と健闘をたたえた。ダンスチア部の部長、山本蒼依さんは「『お疲れさま』と声をかけてあげたい。また夏戻ってこられるように頑張ってほしい」とねぎらった。 ……………………………………………………………………………………………………… ■熱球 ◇兄に誓う、快音は夏に 岡村颯樹一塁手(3年) 「兄の分まで甲子園で活躍する」。2年前、敦賀気比で主将を務めた兄の匠樹(なるき)さん(19)は夏の県大会で優勝するも、新型コロナウイルス感染拡大の影響で甲子園は中止となっており、出場はかなわなかった。そんな兄の無念を傍らで見てきただけに、聖地にかける思いは人一倍だ。 闘志を前面に出し、周りを鼓舞する兄と異なり、元々はおとなしく人見知り。「敦賀気比で野球がしたいと聞いた時、最初は正直不安だった」と匠樹さんは明かす。だが、次第に積極性を身につけ、今では、自身のバッティングフォームなどを撮った動画を自主的に匠樹さんに送り、助言を求めるようになった。「弟の成長を感じ、うれしかった」と匠樹さんは喜ぶ。 この試合では快音を鳴らせず、チームを勝利に導くことはできなかった。試合後には「兄のためにも良いプレーを見せたかった。こんな形で甲子園を去るのはふがいない。練習でさらに自分を追い込み、夏に戻ってきたい」と決意を語った。匠樹さんも「自分の分まで戦ってくれた。大舞台で活躍できるよう、メンタル面の成長に期待している」と健闘をたたえていた。【大原翔】