年間“35億羽”米国内で窓ガラスに衝突死…「バードストライク」対策、日本の現状は?
法律における鳥類保護の現状
「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」(通称「鳥獣保護管理法」)では無許可で鳥を捕獲・殺傷することは禁じられている。しかし、バードストライクは意図的に鳥を殺傷する行為ではなく、事故として起こる問題のため、鳥獣保護管理法の規制対象にはならない。 「生物多様性基本法」や「自然環境保護法」、「河川法」や「海岸法」などにも保全区域に関する規定はあるが、鳥類や動物を守るための具体的な方策や規制までは、条文には記載されていない。 また、バードストライクの被害に遭うのは渡り鳥が多い。しかし、日本は渡り鳥の保護に関する世界的な条約に加盟しておらず、保護には積極的でない。 一方で航空機へのバードストライクについては、事故を招き人間にも危害を及ぼす問題であるため、政府も防止に向けて積極的に取り組んでいる。 風力発電施設についても、絶滅危惧種であるオジロワシやオオワシを含む海ワシ類の衝突が問題視されているため、環境省が「防止策の検討・実施の手引き」を公開している。
野鳥保護のための法律・条例が制定される見込みは?
絶滅危惧種でない野鳥もバードストライクから守るための法律や条例が、今後、日本でも制定される可能性はあるのだろうか。 青木弁護士は「このままだと、かなり低いと言わざるをえません」と語る。 「たとえば、茨城県のハス畑では食害防止のために2000年代から防鳥ネットが設置されていますが、ネットの管理が杜撰(ずさん)なこともあり、ネットが絡まり生きたまま死んでいく鳥が多くいます。この問題は『日本野鳥の会』の会員や一部動物保護団体の間では有名ですが、一般にはほとんど知られていません。 その原因のひとつとして、人間との関わりの中で生き物が苦しんで死んでいるという現実が、テレビなどのメディアでも十分に取り上げられていない点が関連していると考えられます。 『バードストライク』とは鳥が苦しんで死ぬ大変悲惨な問題であるという事実を具体的に伝えて、市民が『他人ごと』と思わずに鳥や動物の置かれた状況に関心を持つようになることが、必要だと考えます」(青木弁護士) 一方で、北米の各市で条例が制定されたように、市民が声を上げれば、経済活動を多少制限することになっても、野鳥を守るための法律や条例が制定される可能性はある。
個人が実践できる、バードストライク予防
そもそも、バードストライクは窓ガラスや建造物などを通じて人間が生み出した問題であるからこそ、工夫によって予防・対処することも可能だ。 たとえば、窓ガラスに明るい色のカーテンをかけるだけでも、景色の映り込みを抑えて、バードストライクを予防することができる。 また、タカやフクロウなどのシルエットを模した「バードセイバー」を窓に貼ることでも予防できる。バードセイバーは市販されてもいるが、自作することも可能だ。 「『仕方がないから受け入れるしかない』で済ませずに個人できることから始めて、他の国で実践されている取り組みから学んでいくことが大切だと思います」(青木弁護士)
弁護士JP編集部