年間“35億羽”米国内で窓ガラスに衝突死…「バードストライク」対策、日本の現状は?
北米の各都市ではバードストライクを予防する条例が制定
2019年、ニューヨーク市は高層ビルの新築や改装の際に野鳥の衝突を防ぐ加工を施した窓ガラスの採用を義務づける条例案を可決。同条例は2021年1月に発効された。 同様の条例は、2011年にサンフランシスコ市が制定したのを皮切りに、ロサンゼルス市やワシントンD.C.など、アメリカの各都市で導入されている。 カナダでも、高層ビルなどの建築・改装の際には「鳥にやさしい開発」のガイドラインに従うことが義務化されており、バンクーバーやオタワ市などにも同様のガイドラインが存在する。 北米では自然保護の伝統が根強い。「全米オーデュボン協会」をはじめとする野鳥保護団体や自然保護団体も数多く存在し、少なくない影響力を持つことも、野鳥を保護するための条例が制定される背景にある。
法律は人間の経済活動を優先
日本にも、北米で制定されているような、野鳥保護のための条例は存在するのだろうか。 飼い鳥の保護活動に取り組む「認定NPO法人TSUBASA」の監事なども務め、動物と法律の問題に詳しい青木敦子弁護士は「野鳥を保護すること自体を目的にして、バードストライクなどを防ぐための法律はありません」と話す。 前提として、法律では動物は「モノ」として扱われる。つまり、野鳥の命よりも、人間の経済活動が優先される。 トキを代表とする、希少な鳥類については「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(通称「種の保存法」)によって、保護区が指定されたり繁殖が行われたりしている。 しかし、その目的は個々の鳥たちの命を守るためではなく、あくまで「種」を保存するためだ。そして、「種」を守る理由は「国民の健康で文化的な生活の確保に寄与すること」だとされている。 トキやコウノトリなどを含む特別天然記念物は「文化財保護法」によっても保護されている。また、「生物多様性基本法」も、希少な動物の保全に関係する法律だ。しかしこれらの法律の条文でも、希少な動物を守るのはあくまで国や人類の利益のためとされている。 そして、希少な動植物を守るためには、希少でない動物の排除も行われる。鹿児島県の奄美大島では、アマミノクロウサギを代表とする野生動物や野鳥を保護するため、ノネコ(山中で野生化した猫)の捕獲が行われている。