WAT'S GOIN' ON 〔Vol. 11〕台湾とりんごのただならぬ関係 情熱の青森ワッツは海をも超える
常勝だけがプロスポーツチームの存在意義なのだろうか…既存のプロスポーツ観に逆らうようにBリーグ誕生以前から活動を続ける不思議なプロバスケットボールチーム《青森ワッツ》の魅力に迫る。台湾プロバスケットボールリーグの新竹ライオニアーズとのグローバルパートナーシップ締結など、アリーナに収まらない活動を開始した青森ワッツが地元青森にどのような波及効果をもたらし得るのか、また、いかにしてプロスポーツチームのあり方を刷新してゆくのか、その可能性を同チームの歴史とともにリポートする。〔全13回〕
転身
下山は、自分自身を戦犯だと名指ししたが、北谷は納得しなかった。 「資金不足を言い訳にしたら、コーチは負けた責任を取らなくていいのか。そんなわけありませんよね。結果を直視すれば、私にはヘッドコーチとしての能力が足りなかった。だから、下山さんに頭を下げました」(北谷) ヘッドコーチを辞するだけでなく、青森スポーツクリエイションからの退社を申し出た北谷に対して、下山は驚くべき提案をした。 「自分(下山)に代わって、社長をやってくれと言われて驚きました」(北谷) 話は、その驚きだけで終らない。 「青森ワッツを続けていくため、また有効な強化策をとるために、経営権を譲る相手を探していると」(北谷) もちろん、北谷は断った。チームを勝たせられなかった自分に社長など務まるはずもないし、そもそも青森スポーツクリエイションの経営権、つまり青森ワッツをどこかの企業に譲るなら、社長になる意味もない。だが、下山のアイディアは奇抜だった。 「ただ売るのでは、船を見つけたとは言えません。たしかに勝てませんでしたが、北谷さんのワッツにかける情熱、それに才覚は本物だという確信を持っていました。彼こそが船長です。そこだけは譲れない。彼を船長(社長)として遇してくれる大きな船(譲渡先)を探すのが、私の最後の仕事だと肚を決めました」(下山)