「危機感」地域差浮き彫りに 学校の防犯機器整備、事件のあった付属池田小は警備員配置
全国20政令市の市立小中学校約4千校のうち約2割の学校で、不審者の侵入防止対策に有効とされる防犯カメラとオートロックシステムがいずれも整備されていなかったことが、産経新聞の調べで明らかとなった。文部科学省は不審者の侵入に警戒を強めてはいるものの、ハード面での整備状況は地域の危機感などによって大きく異なる。 【時系列で見る】過去に起きた小中学校への主な不審者侵入事件 文科省は、昨年3月に埼玉県の市立中で無施錠の校門から刃物を持った男子高校生が侵入した問題を受け、登下校時以外の校門の施錠や来校者の確認などを各教育委員会に通知。不審者が侵入した際の対応のあり方を明記した危機管理マニュアルの再点検を求めるとともに、防犯カメラやオートロックを整備した学校側への補助を手厚くしている。 ただ、産経新聞が実施したアンケート結果によると、地域との兼ね合いで機器の設置が難しいと回答した市もあった。 防犯カメラまたはオートロックの設置率が小中ともに5割以下だった静岡市では、ある学校で防犯カメラの導入を検討したものの、PTAなどからの指摘で頓挫した。同市の担当者は「どこにカメラを設置しても近隣の家を捉える。プライバシーへの配慮を優先させた」といい、設置の難しさを強調。「常に施錠している門を乗り越えないと校内へ侵入できない」とも述べ、現状の対策で問題は生じていないとの認識を示した。 設置率がほぼ100%の横浜市では、ある学校で防犯カメラに加えて新たに校門へのオートロックの整備を検討したが、地域住民向けの通路が校内を貫く形で存在することから整備を見送らざるを得なかった。同市の担当者は「オートロックの整備が地元排除とも受け止められかねず、難しい問題だった」と漏らす。 ■整備ゼロの学校も…一方で池田小は アンケートの回答に応じた19市のうち、小中約200校を管轄する広島市は唯一、いずれの整備もゼロだった。安全対策について同市の担当者は「原則として門の施錠を徹底し、児童生徒の登下校の時間帯は教員の立ち合いのもとで開門している」とし、閉門中に訪問があった際には、「職員が手動で門を解錠している」と説明。防犯カメラとオートロックの今後の整備については「検討中」とした。 校舎への不審者侵入で児童8人が犠牲となった大教大付属池田小(大阪府池田市)では、事件から23年が過ぎてもなお警戒は厳重だ。