ジーザス&メリー・チェインが語る決定的名作『Psychocandy』制作秘話
名曲「Just Like Honey」が生まれるまで
―『Psychocandy』では耳障りなギター・サウンドが聴こえます。それはどの程度スタジオで作られたのですか? ジム:あれはまさにカオスだった。ふと浮かんできたんだ。僕らはギター・サウンドをできるだけ変わったものにしたかった。めちゃくちゃに歪んだサウンドを求めていて、持っていたペダルをたくさん使ったんだ。ほとんどそのまま使ってるよ。そのまま繋げば、信じられないぐらい金切り声を上げるんだ。それがあのサウンドだった。 ―とはいえ、ギターの周囲に反響するリヴァーブもあのサウンドのとても重要なパートです。 ジム:リヴァーブは、レコード制作に慣れていなければ、スタジオ経験が浅い人が使うようなものに思えてしまいがちなんだ。思うに、僕らは60年代のバンド――60年代のガール・バンドとかそういったもの――に夢中で、全てはそこから生まれたようなものだ。 ―「Just Like Honey」や「Sowing Seeds」に「Be My Baby」のビートを使ったのは、そういったガール・グループの影響ですか? ジム:えーっと、奇妙なことに、実際それは意識して決めたものじゃなかったんだ。あのレコードを作って、人々がそれを指摘するまで、僕らは気づいていなかった。あの時は、あのビートが曲の雰囲気を決定づけたように思えたから… ―無意識だったと? ジム:なんというか、きっとそうだったと思う。誰かが「なぁ、『Be My Baby』のドラムビートを使ってみないか?」と言ったようなことは無かったよ。そんな風にあれが出来たわけじゃないんだ。 ―「Just Like Honey」の歌詞は、蜂の巣にまつわるもので、「Cut Dead」にも蜜蜂を追い回すことが歌われています。当時、蜂で何かあったんですか? ジム:おぉ、なんと。知らないよ(笑)。ああいった歌詞がどうして出てきたかなんて、あまりにも昔のことで覚えてないよ。 ―2015年の『Psychocandy』再演ショウ以前には「Cut Dead」や「My Little Underground」が演奏されたことはありませんでした。これらの曲へと立ち返るのはどれほど奇妙な感覚でしたか? ジム:唯一奇妙だったのは、僕らの誰もがどうしてあれらの曲を当時演奏しなかったのか覚えていないことだ(笑)。かなりの影響力があると多くの人たちが捉えていると思われるこのアルバムを僕らが作り、そこには当時わざわざ人前で演奏することもないと思う部分があった、ということさ。それらをどうして演奏しなかったのかは本当に分からないよ。 ―「Just Like Honey」のビデオクリップはまるでアンチ・ビデオのようです。この制作過程で覚えていることは? ジム:あまり覚えていないんだ。あの頃の僕らのビデオは全て――少々変な物言いだけど――僕らはモンキーズみたいなビデオを作りたかったんだ。モンキーズのTV番組のようなものを、そして彼らの曲のようなものとちょっとしたビデオ・クリップができれば、と。それが初期メリー・チェインの全ビデオの青写真だったんだ。 「You Trip Me Up」のビデオ監督がどんな風にしたいか訊いてきたのを覚えているよ。僕らはまさに彼にこう言った。モンキーズみたいにしたい。さらに「ビーチで撮ろう、確実に日差しがあるところでね」と言ったんだ。そして、僕らはイースターの時期に数日間ポルトガルに行ったんだけど、連日の土砂降りだった。およそ10分ぐらい日が差してきて、あんな風にビデオが出来たんだ。 ―『Psychocandy』の後続となる1987年の『Darklands』で、フィードバックが鳴りを潜め、ストレートなロックンロールに重点が置かれたのはどうしてですか? ジム:『Psychocandy』第2弾を作るよう強要されていると感じたからね。それはメリー・チェインの流儀に反するんだ。同じことをそっくりそのまま繰り返したくはなかった。なので、あの時、僕らはアルバムごとに異なる声明を発しようと決めたんだ。そしてそれは僕らのキャリアを通じて続けられている。全てのアルバムはそれぞれが独立したアイテムだ。それはまるで、アルバムごとに新たなバンドが生まれたようなものだったよ。 --- FUJI ROCK FESTIVAL’24 2024年7月26日(金)27日(土)28日(日)新潟県 湯沢町 苗場スキー場 ※ジーザス&メリー・チェインは7月28日(日)出演
Kory Grow