中国の新興電池メーカーがドイツ工場の建設中断 SVOLT、国内市場の過当競争で投資余力乏しく
中国の新興車載電池メーカーの蜂巣能源科技(SVOLT)が、ドイツで進めていた2カ所の工場の建設を中断したことがわかった。財新記者の取材に応じた複数の関係者が明らかにした。 【写真】SVOLTの楊紅新・会長兼CEOは野心的な成長計画を掲げていたが、軌道修正を余儀なくされた SVOLTは中堅自動車メーカーの長城汽車が2016年に設立した車載電池開発部門を母体に、2018年に分離独立して発足した。業界団体の中国汽車動力電池産業創新聯盟のデータによれば、2024年1月から9月までに中国国内で生産された新車への搭載量ベースで、SVOLTの市場シェアは2.9%、メーカー別のランキングで第7位につけている。
■工事再開の見通し立たず 建設を中断したドイツの2工場は、ザールラント州の電池モジュール工場とブランデンブルク州の電池セル工場だ。 SVOLTは前者の建設計画を2020年11月に発表し、20億ユーロ(約3289億円)を投じて年間生産能力24GWh(ギガワット時)の工場を2024年に竣工させる予定だった。後者は同社にとって初の電池セルの海外生産拠点で、2022年9月に建設計画を発表、2025年の生産開始を目指していた。
ところが、2工場の建設工事は2024年に入ってストップし、「工事再開のスケジュールは空白のままだ」と、内情に詳しい関係者は打ち明ける。 SVOLTのドイツ工場は、なぜ建設中断を余儀なくされたのか。 「先行投資として300億元(約6417億円)が必要であり、SVOLTの企業規模では負担が大きすぎる。ただでさえ中国国内の(過当競争で)経営環境が厳しい中、海外工場への投資を続ける余裕はない」 前出の関係者はそう述べ、SVOLTの財務事情が原因だと説明した。
別の関係者も、建設中断の原因はドイツ政府の(保護主義的な)政策や技術的課題などの外的要因ではなく、SVOLTの先行投資が過大だったために追加資金の調達が難しくなったことにあると指摘する。 「現時点ではあくまで工事の“一時休止”だ。まずは資金確保の問題を解決する必要がある」。この関係者はそう話し、先の関係者よりも多少楽観的な見方を示した。 ■CATLのドイツ工場も赤字 SVOLTの現状は、ヨーロッパに進出した中国の車載電池メーカーの“縮図”と言える面もある。世界最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)でさえ、同社のドイツ工場の黒字化をまだ達成できていないからだ。