金正恩に会ったポンペオ、また長官に就任か…トランプ2期目は「イエスマン内閣」(1)
米国にトランプ政権が帰ってくる。頻繁な人事でどたばたした執権1期目とは違い、2期目には安定した内閣運用が可能だろうか。韓国と直接的な関係があるホワイトハウスの要職と外交・安全保障および経済・貿易分野のトップに誰が座るのかも焦眉の関心事だ。 専門家の間では「トランプ氏の考えに逆らわない『イエスマン』が重用される」という見方が出ている。特に外交・安保の場合、1期目にトランプ氏の同盟軽視基調を正したジェームズ・マティス国防長官などいわゆる「大人の軸」が政府に参加したが、2期目はトランプ氏の「米国優先主義」に追従する側近を中心に起用される可能性が高い。このため「トランプ氏との衝突がなく長官の任期保障など安定性の面では1期目より安定的になるかもしれない」という見方も出ている。 専門家らは「どこに跳ねるか分からないトランプ政権の意中を看破するためには、韓国政府が有力な候補群との連結を急ぐ必要がある」と注文する。ウクライナ戦争と中東事態が続くなど激化する国際情勢のため、政権の序盤から韓半島(朝鮮半島)イシューが後回しになるという懸念からだ。 ◆外交安保指令塔候補にオブライエン氏など すでに下馬評は多い。大統領室国家安保室長のカウンターパートであり米外交・安保の指令塔であるホワイトハウス国家安全保障補佐官候補に多数の人物が言及されている。1期目の最後の国家安全保障補佐官を務めたロバート・オブライエン氏をはじめ、ジョン・ラトクリフ元国家情報長官(DNI)、リック・グレネル元DNI代行、キース・ケロッグ前副大統領国家安全保障問題補佐官などトランプ氏が自ら検証したベテランが主に挙がっている。 国務長官候補にも挙がるオブライエン氏は今回の大統領選挙過程で事実上、トランプ2期目の外交・安保路線の下絵を提示して目を引いた。オブライエン氏は6月、フォーリンアフェアーズに「力による平和の帰還」(The Return of Peace through Strength)と題して寄稿し、中国と経済関係を断絶し(decoupling)、中ロに対抗して1992年以降に中断した核実験まで再開するべきだと主張した。 続いて「米軍だけでは中国・ロシア・イランを抑止するのに十分でない」とし「世界自由国家の強力な同盟が必要だ」と強調した。これはトランプ氏が韓国など同盟を軽視するという主張に対する反論レベルでもあった。しかしトランプ氏の持論である防衛費分担金引き上げに関しては「トランプ氏がNATO(北大西洋条約機構)加盟国政府に国防費増額圧力を加えてNATOがさらに強くなった」と擁護した。 トランプ氏の「ゴルフ友達」の一人、ラトクリフ氏は下院情報委員会など主に情報分野の履歴が多い。それで中央情報局(CIA)長官にも挙がっている。駐ドイツ大使を務めたグレネル氏は共和党員では珍しい同性愛者だ。息子ブッシュ政権で米国連代表部の報道官、2012年大統領選当時にミット・ロムニー共和党候補の外交政策報道官を務めるなど典型的な外交通だ。 予備役陸軍中将のケロッグ氏は1期目で最初の国家安全保障補佐官に指名されたマイケル・フリン氏がロシア接触疑惑で退いた後に代行した。情報筋によると、最近ワシントンでは「ケロッグ氏に対するトランプ氏の信頼が厚い」という話がよく出てくるという。 トランプ氏の「米国優先主義」基調を積極的に代弁してきたエルブリッジ・コルビー元国防副次官補も有力な候補として言及されている。コルビー氏は4月の中央日報のインタビューで「次期政権の外交・安保政策の最優先課題は中国と軍事的均衡を合わせること」とし「在韓米軍を中国牽制に活用する代わりに、韓国独自の核武装を考慮する必要がある」と話して注目された。 一部では中国専門家マット・ポッティンジャー元国家安全保障副補佐官の抜てきの可能性も出ている。しかしポッティンジャー氏が2020年の大統領選挙直後に「1・6議会暴動」に対する否定的な立場で辞任し、トランプ氏から憎まれたという指摘もある。 ◆国務長官にルビオ氏、ハガティ氏など 国務長官候補群のうち目を引くのは、副大統領候補にも挙がったマルコ・ルビオ上院議員(フロリダ)だ。対中国タカ派のルビオ氏は上院の外交委と情報委で主に活動し、上院の承認に有利な側面もある。これに先立ち1期目の内閣は上院の承認に阻まれて代行体制を経験している。 1期目に駐日大使を務めたビル・ハガティ上院議員(テネシー)も潜在的な国務長官候補に挙がる。ハガティ氏は9月、国内メディアのインタビューで「米軍の最優先順位は何よりも米国の安保利益」とし「(在韓米軍は)ここ(韓国)に置くのが米国に利益になる」と述べた。 ハガティ氏はコルビー氏とともに日本に近い人物に分類される。情報筋によると、日本政府の内外では「2人が外交安保要職に座れば日本は意思疎通の側面で予測可能性がはるかに高まる」という話が出ているという。 ◆コットン氏、ポンペオ氏、国務・国防長官候補に言及 性格上、国務・国防長官候補群は重なるケースが多い。代表的な人物がトム・コットン上院議員(アーカンソー)だ。陸軍将校だったコットン氏は放送でトランプ氏を熱烈に支持し、早くからトランプ氏の目に存在を知らせた。上院情報委と軍事委、対テロ小委員会などで活動しただけに国防長官に抜てきされる可能性が高いという見方がある。 ウェストポイント(米陸軍士官学校)卒業生のマイク・ポンペオ元国務長官も外交・安保部署のどこかに起用される可能性がある。共和党の潜竜のポンペオ氏は今回の大統領選挙に出馬せず、事実上トランプ氏を支持した。それだけに1期目に続いて2期目でも重用されると予想される。USスチール買収に苦戦する日本製鉄が7月にポンペオ氏を顧問として迎えたのもトランプ氏当選の可能性に備えた措置だったとの解釈がある。 ポンペオ氏はCIA局長と国務長官に在職した当時、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長と何度か会って米朝首脳会談を主導した経験がある。このため専門家らは「2期目にも韓半島関連の大きな業務を担当する可能性がある」と予想している。 米陸軍特殊戦部隊「グリーンベレー」出身で初の下院議員当選者のマイケル・ウォルツ下院議員(フロリダ)、1期目末に国防長官代行を務めたクリストファー・ミラー氏も国防長官候補に挙がる。トランプ氏は大統領選挙直後にマーク・エスパー元国防長官を解任してミラー氏を座らせたが、最近も「最後にとてもよくやったミラーがいた。私は彼を本当に立派だと思った」と好評した。 ◆「韓半島問題に精通した人物は見えず」 問題はこれら候補群と韓国との接点だ。駐ホノルル総領事を務めたペク・ギヨプ韓米同盟財団顧問は「候補群の中に韓半島問題に精通している人物、大きな関心を持っている人物が見られない」と指摘した。そして「誰が引き受けても中東事態とイラン問題、ウクライナ戦争、中国封鎖、日本との関係強化などに政策の優先順位を置く可能性が高い」とし「北の核の問題は非核化でなく現状維持の追求に流れてしまい、韓半島(朝鮮半島)イシューがさらに後回しになれるおそれがある」と話した。 外交・安保トップの候補群に上院議員が多数布陣したことに関連し、最終指名は難しいという見方も出ている。米国は連邦議員の公務員兼職を禁止している。このため外交関係者の間では「共和党が上院で多数党になったが、民主党との議席数の差が大きくないため上院議員が内閣に入るのは難しいかもしれない」という話が出ている。共和党が上下院をともに掌握し、「トランプ氏の対外政策がさらに迅速かつ果敢になる」という見方が多い。 ◆財務長官に募金寄与者か トランプ2期目も高率の関税爆弾などタカ派的な貿易政策が予告されている。それだけに誰が「トランプ式の保護貿易」の舵を取るかも重要となる。ドル高、暗号資産市場の拡大など金融政策の急激な変化も予想される状況だ。 財務長官には投資専門家スコット・ベセント・キースクエアキャピタルマネジメント最高経営責任者(CEO)、億万長者ヘッジファンドマネージャーのジョン・ポールソン氏、ジェイ・クレイトン元証券取引委員長、ラリー・クドロー元国家経済委員長らが挙がっている。 ベセント氏はJ.D.バンス次期副大統領の支持者で、選挙運動の募金に大きく寄与したと評価される。これに先立ちトランプ氏は「ドル高は米製造業に災難」として懐疑的な立場を見せたが、ベセント氏の考えは違う。ベセント氏は先月フィナンシャルタイムズ(FT)のインタビューで「(トランプ氏はドルの)基軸通貨を支持する」とし「それだけに自然にドル高になるだろう」と話した。 またベセント氏はトランプ氏が主張してきた「最大20%の普遍的関税導入」立場に関しても「(トランプ氏は)自由貿易主義者」とした。「関税カード」で交渉力を高めて貿易で有利な立場を得る戦略という説明だ。 44億ドルの財力を持つポールソン氏は自身のフロリダ州パームビーチ邸宅で大規模な募金行事を開くなど大きな役割をした。ポールソン氏も9月、FTのインタビューで「中国産輸入製品に対する高関税賦課公約をウォール街は恐れる必要がない」とし、対外貿易正常化の一環だと述べた。 ウォール街とワシントンの金融政策のベテラン、クレイトン氏はトランプ氏とゴルフを一緒に楽しむ仲でもある。クドロー氏の場合、フォックス・ビジネスに自身の名前が入った番組を進行し、トランプ氏の経済政策を積極的に擁護してきた。